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精密機械の取扱説明書を作成したのに、現場から「わかりにくい」という声が返ってきた経験はないでしょうか。文章を丁寧に作り込んでも、思わぬところで情報が足りず、読み手を迷わせてしまうことがあります。
今回は、読み手が迷わない取扱説明書作成のポイントを、フィンテックスがお客様からいただいたフィードバックをもとに解説します。
目次
精密機械の取扱説明書は、なぜ伝わらないのか
現場の指摘から見る、4つの伝わらない原因
なぜ一般的なマニュアルより「精度」が求められるのか
取説の写真・図解で失敗しないためのコツ
取扱説明書の質が、技術伝承のスピードを左右する
よくある質問
まとめ
精密機械の取扱説明書(以下、取説)は、一般消費者向けのものとは前提が異なります。具体的には、操作者や保全担当者、据え付け工事の担当者など、機械操作の知識をある程度持っている人が読み手になります。
また、ひとつの機械でも、操作者向け・保全担当者向けで冊子を分ける場合があります。
想定読者の幅は、一般消費者向けの取扱説明書より狭く、専門的です。
専門知識のある読み手に向けた取説では、文章を平易にするだけでは不十分です。写真や図解も含め、読み手が必要とする情報の粒度に合わせることが欠かせません。
取扱説明書全般の基本的な作り方は、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:
取扱説明書の作り方とは?手順・ポイント・失敗例までわかりやすく解説
精密機械の取説作成で指摘が多いのは、文章の表現よりも、写真や図解の精度に関する点です。設計図面と現物の対応関係や部品の位置関係は複雑です。写真や図解を載せただけでは説明が不十分な場合があります。反面、文章で細かい補足を加えてしまうと、かえって読みにくくなり、読み手の理解を妨げてしまいます。
この章では、フィンテックスが実際に担当したお客様(A社様)の事例をご紹介します。
A社様からのご依頼を受けて、事前に現地の工場を取材し、機械を使っている様子を映像や写真で撮影しました。さらに、現場の担当者に業務内容をヒアリングしたうえで、初稿を作成しフィードバックをいただきました。この章では、本案件のフィードバック分析で見えてきた、必要な情報が伝わらない取説になる原因と改善のポイントを解説します。
1つ目の原因は、画像の視点がわからないことです。撮影の視点やアングルが明記されていないと、読み手は機械をどの向きから確認すればよいのか迷ってしまいます。精密機械は正面・側面・裏面で部品の配置が変わるため、「どこからの視点・アングルで撮影された画像なのか」を明示することは欠かせません。読み手の理解を高めるには、写真のアングルについて基本的なルールを取り決めたうえで、必要に応じてさまざまな視点からの画像を組み合わせましょう。
2つ目の原因は、撮影した写真の画角が広すぎて細部が見えないことです。写真は撮る画角によって役割が異なります。「引き」の写真は全体像を伝えるのに向いていて、「拡大」の写真は機械の細かな部品や作業者の手元を見せるのに向いています。取説ではそれぞれ写真の役割が異なるため、引きと拡大の写真をセットで掲載すると効果的です。
3つ目の原因は、部品の説明が不十分なことです。「部品のどの部分に対する作業なのか」「ネジの数量やサイズの違いがわかりにくい」「どのケーブルを取り外すのか」といったフィードバックが寄せられました。「ネジを外す」という同じ一文でも、「どの部品の、何本目の、どのサイズのネジか」まで示さなくては、読み手は正しい箇所にたどり着けません。精密機械ほど部品の種類やサイズのバリエーションが多いため、この説明の粒度が伝わりやすさを左右します。同じ形のネジやケーブルが複数並ぶ機械は、番号や色で見分けをつける工夫をしましょう。
4つ目の原因は、写真が暗く対象が見えにくいことです。たとえば、精密機械の内部や裏側は、もともと照明が届きにくい場所が多く、そのまま撮影すると影になってしまいます。撮影時にはカメラのフラッシュ機能や露出(明るさ)補正を使用したり、手元ライトで被写体を直接照らしたりして、影を取り除く工夫を行いましょう。
専門知識がある読み手に向けた精密機械の取説では、文章の表現だけでなく、専門用語の扱い方や翻訳の面でも、一般消費者向けのものとは違う配慮が必要になります。一般的なマニュアルより「精度」が求められる理由と、取説作成の際に気をつけたいポイントをまとめました。
精密機械の取説を読むのは、操作者や保全担当者などの専門知識を持つ人です。専門知識のある読み手にとっては、専門用語の方が意味を素早く理解できるため、噛み砕いた説明では読みにくくなることがあります。
専門用語の使用範囲は、読み手の知識レベルによって変わります。取説作成の際には一律に決めつけず、読み手に確認しながら判断しましょう。読み手の知識レベルに幅広く合わせたい場合は、専門用語に注釈を加えることもおすすめです。誰もが専門用語を理解できるようになり、文章もすっきりとまとまります。
専門用語の扱い方の基本的な考え方は、以下の記事でも解説しています。
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「テクニカル」とは?意味と専門性の高いマニュアルを書く技術を解説
海外製の精密機械の取説では、その機械にしかない専門的な内容が含まれます。翻訳ツールにかけただけでは、日本語として意味が通らない部分が残ることも珍しくありません。
こうした場面で有効なのが、外部委託を活用し、技術面(校閲)と表現面(校正)で役割を分担する進め方です。
実際にフィンテックスへご相談いただいた事例では、技術的な正確さはお客様にご確認いただき、読み手に伝わる日本語表現への調整はフィンテックスが担当しました。得意な領域を分け合うことで、取説の品質も安定します。
また、英語から日本語に訳すと、文章量は減る傾向がありますが、そのまま余白が生まれるとは限りません。日本語は全角文字で、行の高さも必要になるためです。
もうひとつ気をつけたいポイントが、表組みの使い方です。英語版の取説の場合、解説には表組みをあまり用いません。日本語版では、表やインデントを使って全体のバランスをみながら、読みやすくなるように整理しましょう。
関連記事:
英語版マニュアルの書き方|作成の手順とポイントを例文付きで解説
「現場の指摘から見る、4つの伝わらない原因」で紹介した伝わらない原因は、写真の撮り方や図の作り方を少し工夫することで解消できます。取材の段階でコツを押さえた写真を撮り、写真と図解の役割を理解してデザインすれば、取説の質が上がります。ここでは、取説の写真・図解で使えるコツを3つ紹介します。
撮影を始める前に、精密機械の正面・右側・裏側など、対象を撮る視点を決めておきましょう。視点を先に決めておくと、「引きの写真は撮ったが拡大の写真を撮り忘れた」といった漏れを防げます。写真のキャプションには視点の名称を記載しておけば、読み手も迷いません。撮影リストをあらかじめ用意し、それぞれ視点ごとにチェックしながら進める方法も有効です。
写真の明るさは、撮影の時点で意識しておきましょう。写真の明るさを実際より一段階上げて撮影しておくと、印刷したときに暗くて見えづらくなるのを防げます。また、写真を掲載する際は紙面の中央揃えか左揃えで統一します。画像の上に文字を重ねたり、画像同士を重ねたりしないことも、見やすさを保つポイントです。暗くなりやすい精密機械の内部や裏側は、補助照明を使って撮影する方法もあります。
写真と図には、それぞれの役割があります。作業後の品質や仕上がりを示したいときは、実物に近い写真の見本が効果的です。一方、手順の前後関係や部品同士のつながりを示したいときは、図のほうが一目で伝わります。精密機械の取説では、この使い分けを意識するだけでも、伝わりやすさが変わります。
精密機械の取説の質を向上させることは、読み手にわかりやすくする以上の効果があります。ある精密機械の生産企業では、取扱説明書を整備したことで、新人技術者の育成期間が6か月から3か月へと大幅に短縮されました。写真や図の精度を上げる取り組みは、地道に見えて、新人教育のスピードや技術伝承の質に直結します。
写真や図の作り込みは、会社の成長には無関係に思えるかもしれません。しかし、上記のように取説によって育成期間が短縮されれば、教える側の負担を減らすことができます。さらに、新人技術者が独り立ちするまでの人件費を抑えることにもつながります。取説の質を向上させることは、現場の負担を減らすための投資でもあります。
A:可能です。現地での取材や現場の写真撮影から依頼できる場合もあります。マニュアル作成代行会社に相談する際は、対応できる範囲をあらかじめ確認しておきましょう。
A:翻訳だけでなく、専門用語の使い方や、表・インデントなどのレイアウト調整も必要になる場合があります。詳しくは、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:英語版マニュアルの書き方|作成の手順とポイントを例文付きで解説
A:伝えたい内容によって使い分けるといいでしょう。部品の位置や状態を正確に伝えたいときは写真、言語化しにくい動きや手順の流れを伝えたいときは動画が向いています。
A:業界や機械の種類によって、確認すべき規格が異なる場合があります。個別の適合可否については、規格の原文や専門家への確認をおすすめします。
精密機械の取扱説明書が伝わらない原因の多くは、文章そのものだけでなく、写真や図の情報不足もあります。たとえば、写真の「視点・画角・対象の特定・明るさ」を意識するだけで、読み手の迷いを大きく減らせます。
フィンテックスでは、取扱説明書の作成で、現場での取材から写真撮影、図解の考案までを一貫してサポートしています。精密機械の取説作成でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
フィンテックスは1987年の創業以来、500社以上の業務マニュアル・操作マニュアル作成を支援してきたマニュアル作成の専門会社です。
フィンテックスのマニュアル作成代行は、AIを使うかどうかをお客様に選んでいただける2本立てです。
どちらを選ぶかは、お客様の情報の取り扱い方針と、優先したいことにもとづいて決めていただけます。たとえば、社内方針としてAIの利用を認められるか、納期と費用をどこまで抑えたいか、といった観点です。なお、いずれの場合も、お客様の情報は秘密保持契約(NDA)と社内管理体制のもとで取り扱います。お客様のデータをAIの学習に利用することはありません。
AIを活用する場合の編集方針として掲げているのが「AIで6割、プロで10割」という考え方です。AIの下書きで作業量のおよそ6割まで進め、人が仕上げて10割にする、という役割分担の目安を表しています。
下書きづくりをAIが担うようになっても、残りの部分は専門会社の仕事として磨き続けたいと考えています。読者のペルソナ設計、内容の裏付け、構成設計、運用の定着といった部分です。AIで作ったマニュアルの点検、仕上げ、運用設計のご相談も承っています。
フィンテックスのAIへの向き合い方は、次の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:
フィンテックスのAI活用に対する考え方
操作マニュアル
大型機械の操作やメンテナンスについて、機械のテクニカルイラストを用いながら分かりやすく間違いのない記載で、操作担当者がスムースに作業できるようなマニュアル作成を行いました。
業務マニュアル
初任者用の教育アイテムとして業務マニュアルの整備を計画。徹底した現場取材・撮影を通じて情報を得るとともに、現場で本当に使えるマニュアルを作り上げました。以降、別業務にも展開してマニュアル整備プロジェクトを毎年継続しています。
監修者

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
著書:マニュアルが会社を救う: 属人化からの解放
著書:「はい」が7つの意味を持つ国
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php
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