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マニュアルの中で相手をどう呼ぶか。「お客様」「顧客」「ユーザー」のどれを選ぶかは小さな問題に見えて、文書全体の印象と読みやすさを左右します。しかも呼称は組織ごとの文化が色濃く出るため、一般的な正解を決めにくい領域です。
本記事では、フィンテックスが自社制作データ約221万文を解析して集計した呼称の使用実態から、呼称ルールの決め方と統一の進め方を解説します。
本記事のデータは、マニュアルの表記ゆれを30グループ・90語にわたって実測した、次の調査の結果にもとづいています。調査の方法と、表記ゆれの全体像は、こちらの記事をご覧ください。
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目次
呼称によって変わる文書の性格
約221万文のデータで見る呼称の実態
呼称ルールを決める3つのステップ
呼称の統一でつまずくポイント
よくある質問(FAQ)
フィンテックスが提案する、呼称から設計するマニュアル
まとめ
「お客様」は、接客・応対の場面で相手への敬意を前面に出す呼称です。「顧客」は、業務の対象として相手を客観的に扱う、社内文書らしい硬めの表現です。「ユーザー」は、システムやサービスの利用者を指す機能的な呼称で、IT系のマニュアルで広く使われています。
| 呼称 | ニュアンス | 相性のよい文書 |
|---|---|---|
| お客様(お客さま) | 敬意・接客的 | 窓口応対・コールセンター・接客手順 |
| 顧客 | 客観的・管理的 | 社内業務マニュアル・営業管理 |
| ユーザー(ユーザ) | 機能的・中立 | システム操作・IT系マニュアル |
同じ業務でも、店頭スタッフ向けの手順書なら「お客様」、本部の管理業務なら「顧客」、システム管理者向けなら「ユーザー」が自然です。呼称の選択は語感の好みではなく、そのマニュアルが誰の視点で書かれているかを示すものと捉えることが大切です。
冒頭で紹介した調査では、自社制作データ約221万文を対象に、揺れが見られた表記30グループ・90語の使用シェアを計測しています(重複・品質不良を除いた約49万文の全量計測・出現頻度加重・2026年7月)。ここでは、そのうち呼称のシェアを見ていきます。

集計の結果、シェアは「お客様」33%・「顧客」29%・「ユーザー」24%・「お客さま」9%・「ユーザ」5%でした。計測した30グループの中で唯一、首位の表記が4割に届かず、5つの表記に分散しています。呼称は、計測した30グループの中で最も揺れていた言葉です。操作用語の「クリック」(79%で決着)とは対照的に、呼称は組織・文書ごとに選択が分かれています。
分布の背景には、文書の種類と業界の文化があります。システム操作マニュアルの多い案件では「ユーザー」が、事務・管理系の業務マニュアルでは「顧客」が、店頭・窓口の応対手順では「お客様」系が選ばれる傾向が見られました。呼称の分散は、書き手の迷いの結果ではなく、それぞれの現場に合った呼称が選ばれた結果と読むのが自然です。
見逃せないのは、「ユーザ」と「ユーザー」という長音の揺れです。実測では「ユーザー」24%に対し「ユーザ」5%と、長音を付ける表記が優勢でした。長音を省く書き方はシステム系文書の旧来の慣行で、近年の一般的な文書では長音を付ける表記が主流です。同様の揺れは「オペレータ/オペレーター」「サーバ/サーバー」にもあり、呼称とあわせて長音のルールも決めておく必要があります。
敬称系の中でも、「お客様」33%と「お客さま」9%が約4対1で併存していました。金融機関などでは、やわらかい印象の「お客さま」を社内標準にしている組織もあります。漢字とひらがなのどちらを選ぶかは、組織のブランド方針によって決まります。
接客・応対の手順なら「お客様」系、管理業務なら「顧客」、システム操作なら「ユーザー」系を第一候補にします。1冊の中に複数の場面が混在する場合は、主な読み手の視点に合わせて1つに寄せるか、章の性格ごとに使い分けの線を明文化します。
読み手の視点に立ったマニュアルの書き方は、次の記事で解説しています。
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「ユーザー目線」で変わる!わかりやすいマニュアル作成のコツ
呼称は、企業のブランド・CS方針と結びついた言葉です。社内報や既存規程で「お客さま」と定めている組織では、マニュアル内の記載に「顧客」という用語を使うと違和感を持たれます。マニュアル作成の早い段階で、指定の呼称と、使わない表記の有無を確認しておきましょう。
「ユーザー」か「ユーザ」か、「お客様」か「お客さま」かまで決めて、呼称ルールは完成します。決定は用語集に1行で残し、執筆メンバー全員が同じ表を見て書く状態を作ります。
呼称ルール(応対手順は「お客さま」・長音あり)を決めると、文章は次のように変わります(例)。
統一前(混在あり)
- お客様の会員番号を確認します。
- 顧客情報画面を開き、ユーザの登録内容を照会します。
- お客さまへ照会結果をご案内します。
統一後(「お客さま」に統一・画面名は実表示どおり)
- お客さまの会員番号を確認します。
- 「顧客情報」画面を開き、お客さまの登録内容を照会します。
- お客さまへ照会結果をご案内します。
画面名の「顧客情報」は実際の表示に合わせて残しつつ、地の文の呼称を1つにそろえます。この線引きができれば、読み手は呼び名の違いに気を取られずに手順へ集中できます。
呼称のルールは、次のような形で用語集に書き残します(記入例)。
| 項目 | 決定した表記 | 対象・補足 |
|---|---|---|
| 相手の呼称 | お客さま | 画面名・帳票名・引用は実表示どおり |
| システム利用者 | ユーザー(長音あり) | サーバー・オペレーターなど関連語も長音あり |
| 社内側の主体 | 担当者 | 部署名は正式名称で記載 |
| 使用しない呼称 | 顧客(地の文) | 画面名「顧客情報」等の固有表記は例外 |
呼称・長音・例外の3点がそろえば、複数人で書いても呼び方はぶれません。表はマニュアルの冒頭か別紙に置き、改訂時にも引き継ぎます。
画面に表示される文言やボタン名が「ユーザ登録」となっている場合、本文の方針が「ユーザー」でも、画面の引用は実物どおりに記載します。実際の表示と一致していることは、呼称の統一よりも優先されます。
過去のマニュアルすべてを一斉に置き換えるのは現実的ではありません。新規・改訂のものから新ルールを適用し、対象範囲を決めて段階的にそろえていくほうが、無理なく定着します。
呼称は、CS方針の見直しやブランドリニューアルで変わることがあります。呼称ルールを用語集として一元管理しておけば、方針変更の際も、どの文書のどこを直すかをすぐ洗い出せます。ルールの明文化は、方針の変更への備えにもなります。
A:場面が明確に分かれるなら問題ありません。たとえば「応対手順ではお客様、システム操作ではユーザー」のように、使い分けの基準を冒頭で宣言し、その線を最後まで守ることが条件です。
A:どちらも使われていますが、近年の一般文書では長音を付ける表記が主流です。社内標準があればそれを優先し、なければ「ユーザー」に統一したうえで、関連語(サーバー・オペレーターなど)も同じ長音ルールにそろえるのがおすすめです。
A:問題ありません。たとえば社外公開のFAQでは「お客様」、社内の事務マニュアルでは「顧客」とする運用は自然です。その場合は、文書ごとにどちらを使うかをルールとして明文化しておきましょう。
A:業種固有の呼称がある場合は、それを第一候補にしましょう。会員制サービスなら「会員」、行政系なら「利用者」のように、読み手の現場で日常的に使われている言葉が、マニュアルでも最も伝わります。
A:はい、考え方は同じです。読み手側の呼称(お客様など)とあわせて、動作の主体を表す呼称も用語集で1つに決めておけば、誰がやる操作かが明確になり、手順の誤読を防げます。
フィンテックスは1987年の創業以来、500社以上のお客様のマニュアル作成を支援するなかで、お客様ごとの呼称・表記の流儀を尊重しながら文書を仕上げてきました。自社データの裏付けと、第三者の立場からのヒアリングをもとに、呼称・長音・敬称まで含めた用語ルールを案件の最初に設計しています。読み手のリテラシーに合った、現場で使われるマニュアルづくりをご支援します。
「お客様」「顧客」「ユーザー」に唯一の正解はなく、読み手の視点と組織の文化が決め手になります。データ上も呼称は分散しており、そのため、早く決めて1冊の中で守る運用が品質を支えます。まずは、いま作っているマニュアルの呼称と長音ルールを用語集に書き出すことから始めてみましょう。
フィンテックスでは、用語設計を含むマニュアル作成代行・コンサルティングを行っています。呼称や表記の統一にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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「保存」と「保管」どちらを使う?データでも決着がつかない用語の決め方
操作マニュアル
新サービス立ち上げにともなうマニュアル作成。短期間ながら、ユーザーにやさしい解説とソフトバンクらしいビジュアルにこだわったマニュアルを完成させました。
マニュアルコンサルティング
「自社内でマニュアルが作れるようになりたい」というご要望に応え、制作ガイドラインやフォーマットの整備、またWordにおける操作方法のレクチャー会など、様々な上流工程の作業をお手伝いしました。モノづくりではなく企画検討が中心のお仕事でしたが、弾力的なスケジュール対応も含めて大きな評価をいただきました。
監修者

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
著書:マニュアルが会社を救う: 属人化からの解放
著書:「はい」が7つの意味を持つ国
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php
プロが解説!マニュアル作成のコツ
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2026.10.28

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