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マニュアルを整備したのに、「あの人に聞かないと分からない」業務が残っていませんか。
原因は、マニュアル自体の出来ではなくマニュアル化の手順にあります。まずは標準化で基準となる進め方を決め、文書として残すことで、業務の属人化を解消することができます。
今回は、マニュアル化と標準化の違いを整理します。あわせて、マニュアルを作っても属人化が残る理由と、業務整理でどちらから着手すべきかを解説します。
目次
マニュアル化と標準化は何が違うのか
混同しやすい6つの言葉の整理マップ
マニュアル化しても属人化が残る3つの理由
業務標準化とマニュアル作成を進める5ステップ
標準化しきれない業務はどう扱うか
まとめ|マニュアル化と標準化は順序で考える
マニュアル化と標準化は、セットで語られることが多い言葉です。しかしこの2つは、業務に対してまったく違う働きかけをしています。
違いをひとことでいえば、マニュアル化は「記録する」活動、標準化は「決める」活動です。ここを分けて考えられると、自社の状況を正しく診断できるようになります。
マニュアル化とは、業務の手法を文書にまとめ、読み手が自分で業務を遂行できる状態を目指す活動です。業務の手順・注意点・使用するツールなどを整理し、マニュアルや手順書として残します。
ただし、そのための手段は「すでにあるもの」を写すことです。日々おこなわれている業務を観察し、聞き取り、文章や図に置き換えていきます。
つまりマニュアル化は、業務の手法そのものを変える活動ではありません。業務の現状(as-is)を見えるようにする活動です。
ねらいは読み手が業務を遂行できる状態ですが、写す対象が整っていなければ読み手には届きません。整っていない業務を写せば、整っていない状態でそのまま文書になります。
標準化とは、業務・品質にルールや基準を定めて、誰が担当しても同じ結果になる状態を目指す活動です。
たとえば、経理の請求書処理を3人が担当していて、確認の順番がそれぞれ違うとします。標準化では「正とする順番」を1つに決めます。処理方法を3通りすべて記録するのではなく、どれを正とするかを判断するのが標準化です。
ここで必要になるのは、決裁です。どの手法を選ぶのかを業務の責任者が判断し、基準とします。つまり標準化は、業務のあるべき姿(to-be)を描く活動です。
業務の標準化については、以下の記事でも解説しています。
関連記事:
業務標準化とは?得られる効果や成功させるためのポイント
改めて、マニュアル化と標準化の違いを並べて確認しましょう。
| 項目 | マニュアル化 | 標準化 |
|---|---|---|
| 活動内容 | 既存の業務手法を文書化する | 業務・品質にルールや基準を定める |
| 成果物 | マニュアル・手順書 | 統一された手法と判断基準 |
| 主な担い手 | 業務担当者・マニュアルの作成担当者 | 業務の責任者・決裁者 |
| 着眼点 | 現状(as-is) | あるべき姿(to-be) |
| 単独実施のリスク | 手法のばらつきが残る | 決定事項が現場に浸透しない |
表のとおり、2つは対立するものではありません。標準化で決めた内容を、マニュアル化で現場に届けるという関係です。どちらか一方だけでは成果になりません。
あわせて意識したいのは、動く人が違うという点です。マニュアル化は業務に詳しい担当者だけでも進みますが、標準化は責任者の決裁がなければ動き出しません。
業務整備の場面では、標準化とマニュアル化のほかにも似た言葉が並びます。言葉の位置関係が分かると、社内で議論がかみ合いやすくなります。
| 用語 | 活動内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 標準化 | 業務・品質にルールや基準を定める | 決める |
| マニュアル化 | 業務手法を文書化する | 記録する |
| 仕組み化 | 人に依存せず運用が続く体制を整える | 決める(体制まで含む) |
| 体系化 | 業務間の関係と順序を整理する | 決める前の下ごしらえ |
| 構造化 | 業務を要素に分解し再現可能にする | 決める前の下ごしらえ |
| 平準化 | 業務量と負荷のかたよりをなくす | 配分を決める |
それぞれの詳細は、次の記事で解説しています。
関連記事:
平準化とは?標準化との違いや無理のない定着手法を解説
仕事の「仕組み化」とは?標準化との違いとメリット・手段を解説
業務の構造化とは何か?マニュアル整備から始めるAI活用の道筋
SOP(標準作業手順書)とは?マニュアル・標準化との違いを解説
標準化や体系化といった言葉が飛び交って混乱したときは、ひとつだけ問いかけてみましょう。「いま話しているのは、決める話でしょうか。それとも記録する話でしょうか」という確認です。
たとえば「決める話」であれば、業務の責任者が同席していないと結論が出ません。「記録する話」であれば、業務に詳しい人とマニュアルの作成担当者の時間を確保しなくてはなりません。
必要な人と必要な時間が変わるため、この切り分けは効果的です。言葉の定義そのものを暗記する必要はありません。
ここからが本題です。マニュアルを整備したのに属人化が残る状況には、共通する原因があります。いずれも、マニュアルの品質ではなくマニュアル化の手順の問題です。
なお、属人化そのものの原因と基本的な対策は、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:
属人化とは?その原因と対策のポイントを、業務マニュアル作成のプロが解説
もっとも多いのが、標準化を経ないままマニュアル化に入っている状態です。
マニュアル化は「現状を記録する活動」です。そのため、手法やルールがあいまいなままでは中途半端なマニュアルにしかならず、読み手は正しい業務手順やルールを把握できません。
結果として、読み手は「詳しい人に直接聞く」という、いちばん確実な方法を選びます。マニュアルはあるのに属人化が続くのは、こうした流れが起きているためです。
マニュアルは完成していて、記載されている内容にも問題はない。それでも属人化が残ってしまう場合、マニュアルに記録された手法・ルールが業務担当者に浸透していないことが考えられます。
よくあるのは、マニュアルが作成・更新されたこと自体が知られていないケースです。更新したマニュアルを共有フォルダに置いただけでは、現場は従来の手法を変えません。教育担当者が以前の手法のまま教えてしまえば、新人にも古い手法がそのまま引き継がれます。
こうなると、読み手はマニュアルと現場の教育担当者の教えの違いで迷い、業務をよく知る社員に確認を求めます。この状態では、せっかく標準化やマニュアル整備を行っても、「属人化」は解消されません。
3つ目は、手順はあるのに判断基準が抜けているパターンです。たとえば、「状況に応じて対応します」「上司に確認します」といったあいまいな表現で説明されている状態です。
判断基準は、組織で決めていなければ正しい説明をマニュアルに記載できません。マニュアルがあっても最終判断は読み手に委ねられます。その結果、担当者ごとに品質がばらつき、業務進行の妨げになります。
判断基準が示されていないマニュアルは、経験者には通じても、経験の浅い読み手には役に立ちません。その結果、判断できる人に業務が集まるため、属人化は解消しないままになります。
標準化とマニュアル作成の進め方を5ステップで整理します。標準化の基本的な進め方は、章末の関連記事をあわせてご確認ください。
はじめに、業務の手法や手順に関する情報を集めます。既存の手順書や参考資料をそろえ、不足する部分は担当者から聞き取ります。
このステップでは集めた情報をきれいにまとめないことを意識しましょう。人によって手法が違うなら、ここでは統一せずに並べて記録します。ばらつきの実態が見えていないと、次のステップで何を決めるべきか分かりません。
洗い出しの具体的な進め方は、次の記事で解説しています。
関連記事:
業務棚卸とは?手順や成功のポイントを、サンプルとともに解説
業務の可視化とは?見える化との違いや暗黙知を活用する手法を解説
洗い出した手法を見比べて、標準とするものを決めます。もっとも重要ですが、省略されやすい工程です。
まず決めるのは、手法を選定する軸です。所要時間の短さ、ミスの起きにくさ、経験の浅い人でも迷わないこと、品質の高さなどが軸になります。何を重視するかは企業や事業、価値観や文化などで変わります。ここで軸がそろっていなければ、関係者の判断は最後までかみ合いません。
また、標準とする手法は、既存のものから選ぶことが最適とは限りません。どれも十分でなければ、新しい手法を設計することも選択肢のひとつです。いずれの場合も、前後の業務手順もあわせて整理しましょう。
決裁者は、あらかじめ業務の責任者に定めておきましょう。担当者どうしの話し合いでは、それぞれの手法に理由があるため結論が出にくくなります。
決まった内容を文書にしましょう。ここでようやくマニュアル化の工程に入ります。
ステップ2を経ていれば、記載する対象はひとつに絞られているでしょう。業務手順・ルールが明確に記載されていれば、読み手が迷うことも自然になくなります。
マニュアルの書き方や構成のコツは、次の記事で解説しています。
標準を決めても、当てはまらない場面は出てきます。そこで、例外が出たときの扱いを先に決めておきましょう。
具体的には、誰に相談するか、記録をどこに残すかなど、標準を見直す頻度を定めます。例外の扱いを決めておくと、標準化の活動が現場でも意識され、浸透していきます。
マニュアルができたら、整備したことを現場に周知します。標準化はここまでが1セットです。
伝えるのは、マニュアルの格納先だけではありません。どの業務の手法が変わったのかと切り替えの時期も示しましょう。
あわせて決めておきたいのが、伝える相手の範囲です。日々業務をする担当者だけでなく、教育担当者まで含めると、人によって手法や教える内容が変わったり、古い手法に逆戻りしたりすることを防げます。結果として、決めた標準が現場に根づきやすくなります。
ここまでの流れを踏むと、マニュアルは「読めば自分で業務を進められる文書」に近づきます。
標準化の全体像や効果については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:
業務標準化とは?得られる効果や成功させるためのポイント
すべての業務で手法を1つに決められるわけではありません。顧客対応やトラブル対応のように、相手や状況によって進め方が変わる業務があるためです。ここでは、決めきれない業務が残ったときの扱いを整理します。
顧客対応やトラブル対応は、相手や状況によって進め方が変わるため、ひとつの手法に固定することはできません。手法を限定してマニュアル化してしまうと、現場では役に立たない文書になります。
ここで有効なのが、手順ではなく判断の観点を記載するという考え方です。「何を優先して考えるか」「どこまで自分で決めてよいのか」「どの時点で上長に報告・相談するか」を明示します。
手順は決められなくても、優先順位と権限の範囲は決められます。優先順位と権限の2つが記載されていれば、経験の浅い読み手でも判断の道筋をたどれるようになります。
一方で、すべての業務を標準化しようと考えると、マニュアル化への着手が止まってしまいます。日々の業務も動いている中で、標準化を進める負担が大きいためです。
現実的なのは、業務ごとに分けて進める方法です。すでに手順が固まっている業務は先にマニュアル化し、決めきれていない業務は標準化から着手しましょう。
A:マニュアル化は「業務の手法を記録する活動」、「標準化は業務のルールや基準を決める活動」です。違いは動く人にも表れます。マニュアル化は業務担当者だけでも進みますが、標準化は業務の責任者の決裁が必要です。ただし、どちらか一方を進めるだけでは属人化は解消しません。
A:標準化が済んだ業務から順にマニュアル化して問題ありません。手法やルールが確立していない業務は標準化が必要ですが、社内全体で足並みをそろえようとすると、決めることが多く、いつまでもマニュアル化に着手できません。
A:標準化はすべての判断を固定する活動ではないため、現場の工夫や柔軟性が失われることはありません。相手や状況によって進め方が変わる業務では、優先順位と権限の範囲だけを決め、その中での判断は担当者に任せることもできます。任される範囲が明示されるぶん、工夫の余地はむしろ見えやすくなります。
A:標準を決めるところからでも、マニュアル作成だけでも外部委託できます。すでに標準が決まっていて文書化の手が足りないなら、マニュアル作成の委託だけで問題ありません。業務の手法やルールがあいまいな状態なら、業務の整理から依頼したほうが結果的に早く進みます。どちらが自社の状況に合っているのか、事前に把握しておくことが重要です。
マニュアル化は業務を記録する活動、標準化は業務のルールや基準を決める活動です。
マニュアルを整備しても属人化が残る場合は、次の3点を確認してみましょう。
いずれもマニュアルの品質ではなく、マニュアル化の手順に原因があります。決める・書く・伝えるの3つを順番に行えば、同じ労力でもマニュアルの効き方は大きく変わります。
フィンテックスは、業務の見える化や標準化も含めた、業務マニュアル整備を得意としています。現場で本当に役立ち、使いやすいマニュアルを作成したい方はぜひご相談ください。
フィンテックスは1987年の創業以来、500社以上の業務マニュアル・操作マニュアル作成を支援してきたマニュアル作成の専門会社です。
フィンテックスのマニュアル作成代行は、AIを使うかどうかをお客様に選んでいただける2本立てです。
どちらを選ぶかは、お客様の情報の取り扱い方針と、優先したいことにもとづいて決めていただけます。たとえば、社内方針としてAIの利用を認められるか、納期と費用をどこまで抑えたいか、といった観点です。なお、いずれの場合も、お客様の情報は秘密保持契約(NDA)と社内管理体制のもとで取り扱います。お客様のデータをAIの学習に利用することはありません。
AIを活用する場合の編集方針として掲げているのが「AIで6割、プロで10割」という考え方です。AIの下書きで作業量のおよそ6割まで進め、人が仕上げて10割にする、という役割分担の目安を表しています。
下書きづくりをAIが担うようになっても、残りの部分は専門会社の仕事として磨き続けたいと考えています。読者のペルソナ設計、内容の裏付け、構成設計、運用の定着といった部分です。AIで作ったマニュアルの点検、仕上げ、運用設計のご相談も承っています。
フィンテックスのAIへの向き合い方は、次の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:
フィンテックスのAI活用に対する考え方
マニュアルコンサルティング
業務マニュアル
内製コンサルティング
現場作業の徹底的な取材を行い、一部のみフィンテックスでマニュアル作成、それ以外は構成・ひな形のみ担当し、残作業はお客様の内製化で対応。チームごとにバラバラだった作業手順が見直され、かつ担当メンバーに業務改善意識が根付いたことで大きな業務改革が実現できました。
業務マニュアル
事務所運営、タレント管理という特殊業務について、各業務の実作業者へのアンケート、および徹底したヒアリング取材を実施。週に一度の定例会や読み合わせ会など、丁寧な対応を経て、言語化しづらい業務のマニュアル化を実現しました。
監修者

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
著書:マニュアルが会社を救う: 属人化からの解放
著書:「はい」が7つの意味を持つ国
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php
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