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マニュアル作成代行はAIで不要になる?制作会社が語る役割の変化

マニュアル作成代行はAIで不要になる?制作会社が語る役割の変化

生成AIに業務の流れを説明すれば、マニュアルの下書きが数分で作成できます。では、マニュアル作成を外部に頼む必要はもうないのでしょうか。

今回は、AIでマニュアルを作れる時代になって何が変わり、何が変わっていないのかを整理します。40年近くマニュアル作成代行サービスを展開してきたフィンテックスの見解です。

目次
AIで下書きが作れるのに、マニュアルが完成しない3つの理由
AIで工数を削減できた工程と、変わらなかった工程
AI時代の作成代行会社に残る4つの役割
マニュアルの品質は、誰が責任を負うのか
経営判断として何が変わるのか
よくある質問(FAQ)
まとめ

 AIで下書きが作れるのに、マニュアルが完成しない3つの理由

「AIでマニュアルを作ってみたが、結局使い物にならなかった」というご相談をいただきます。理由は3つに整理できます。

理由1 書くべき素材が、担当者の頭の中にとどまっている

マニュアルに書くべき内容の多くは、手順そのものではなく、状況に応じて適切な対応を選ぶための判断基準です。どの条件でどちらに進むのか、例外が起きたときに誰へ確認するのか。担当者は日常業務の中で、こうした判断を無意識に処理しています。

あるメーカーのご担当者は、ヒアリングの場でこうおっしゃいました。「私の頭の中を洗いざらい出さないと、マニュアル化できないと気づいた」。素材が言語化されていない状態では、マニュアルに書くべき素材をAIに渡すことはできません。

関連記事:
属人化とは?その原因と対策のポイントを、業務マニュアル作成のプロが解説

理由2 どこまで書くかを決められない

マニュアルは、読み手を誰に設定するかで書く量が変わります。新任者向けなら前提から書く必要があり、経験者向けなら要点だけで十分です。同じ業務でも、マニュアルに記載するべき情報量が大きく変わります。

読み手を明確にしないまま着手すると、完成後に「思っていたものと違う」という「ずれ」が生じます。「何をもって完成とするか」の定義は、AIが決めてくれるものではありません。

理由3 初版作成後の更新が止まる

初版はできたものの、半年後には現場の実態と合わなくなっている。よくあるパターンです。マニュアル更新の担当者と頻度、承認の流れが決まっていないと、更新は誰の仕事でもなくなります。 社内で更新の作業量を見積もれず、作り直しに大きな費用がかかる状態で止まってしまった例もあります。マニュアルは作った時点ではなく、使われ続けることで価値が生まれるものです。

AIで工数を削減できた工程と、変わらなかった工程

「書くべき素材が担当者の頭の中にとどまっている」「どこまで書くかを決められない」「初版作成後の更新が止まる」。この3つは、いずれもAIが越えられない壁でした。では、AIの活用でどこの工数を削減できたのでしょうか。工程ごとに整理します。

なお、工程ごとにAIが得意なこと・苦手なことは以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:
AIでマニュアル作成はどこまでできる?2026年現在の実力と限界を解説

AIで工数を削減できた工程

工数を削減できた工程は、はっきりしています。

ひとつは、大量の素材の読み込みと整理です。打ち合わせの録音、既存のメモやマニュアルといったマニュアルの基となる大量の素材に目を通して要点を拾う作業は、短時間で終わるようになりました。

もうひとつは、ひな形をつくる工程です。構成案、本文のたたき台、図表の下地など、以前はゼロから書き起こしていた部分も、AIが出した下書きから着手できます。表記のゆれの一次検出や、多言語版の下訳(翻訳の下書き)もAIで進められます。

いずれも「すでにある情報を、別の形に変える」作業にあたります。工数を削減できたのは、下書きにたどり着くまでの作業です。下書きを完成品に仕上げるのは、いまも人の手です。

AIの活用に関係なく人が担う工程

社内の業務には、「この場合はA、例外のときはB」という現場の判断基準が必ず存在します。それがメモや資料にもなっておらず、担当者の頭の中にだけある、という状況の場合、AIに渡せる素材を人が準備する必要があります。AIが文章を作成できるのは、渡された情報の範囲内だからです。

次の4つは人が引き受けます。

  • 業務のあるべき姿を決める
  • ヒアリングで現場の判断基準を引き出す
  • 記載内容と業務の実態が合っているかを確認する
  • 更新が続く体制をつくる

4つとも、AIが登場する前から人が担ってきた工程です。AIが台頭する現在も、おそらく今後も人が担う工程となることでしょう。

何が変わったのか

下書きづくりの工数が削減されると、依頼する側の目は残った工程に向きます。以前の代行会社は「原稿を書いてくれる会社」と見られることが多くありました。そこに、決める・引き出す・確認する・続かせるという4つの工程が浮かび上がってきたのです。

役割そのものが変わったわけではありません。代行会社の価値がどこにあるのかが、見えやすくなったのです。

なお、ここでの整理は現時点の見立てです。AIを組み込んだ作成代行のやり方は各社が模索している段階にあり、定まった正解はありません。

下書きの作成においてAIで工数を削減できた2つの工程と、AIの活用に関係なく人が担う4つの工程を対比した図

AI時代の作成代行会社に残る4つの役割

前章の「AIの活用に関係なく人が担う工程」で挙げた4つが、そのまま代行会社の役割になります。「決める」・「引き出す」・「保証する」・「続かせる」の順に見ていきます。

役割1 決める――あるべき姿を決める議論の相手になる

マニュアル整備の出発点は、現状の手順を写し取ることではありません。「本来はどうあるべきか」を決めることです。

現場に長くいると、いまのやり方が当たり前に見えます。外部の立場から「なぜその順番なのか」と問い直す相手がいることで、整理が進みます。代行会社の最初の仕事は、執筆ではなく意思決定の支援です。

関連記事:
業務の構造化とは何か?マニュアル整備から始めるAI活用の道筋

役割2 引き出す――第三者として暗黙知を聞き出す

業務に詳しい人がマニュアルを自分で書くと、初心者が読んでも理解できないマニュアルになりがちです。業務を知っている人は、基礎知識や前提事項をどこまで省略できるのか、判断がつかないためです。

その業務を知らない人が質問し、答えを聞き取る形にすると、省略されていた前提が明らかになります。第三者が入る意味は、文章力ではなく知らない立場から質問できることにあります。

関連記事:
業務の可視化とは?見える化との違いや暗黙知を活用する手法を解説

役割3 保証する――品質に責任を負う

複数の担当者が分担してマニュアルを整備すると、章ごとに書き味や粒度がばらつきます。品質を一定に保つには、次の作業が必要です。

  • 用語をそろえる
  • 粒度を均一にする
  • 記載内容と業務の実態を照合する

下書きの作成が速くなっても、これらの工程は減りません。

外部に委託する価値のひとつは、品質を保つ工程を引き受けてもらえる点です。ただし、どこまで責任を負うかは会社によって違います。次の章で詳しく見ていきます。

関連記事:
マニュアル作成の外部委託ってどう?内製との違いを徹底解説

役割4 続かせる――更新が回る体制を設計する

ご相談で多いのは、マニュアルの所管部署が定まっていないという悩みです。作成を外注しても、維持管理は社内に戻ってきます。引き受け先が決まらないまま戻されたマニュアルは、そのまま放置されます。

マニュアルは、運用しながら育てる文書です。よく知られた例が、無印良品を運営する良品計画の「MUJIGRAM」です。店舗業務のマニュアルを、現場からの改善提案をもとに毎月更新する仕組みが公開されています。更新の担当者と頻度、改訂の承認ルートを設計しておけば、社内で回り続けます。

代行会社の役割は、更新のルールとテンプレートを整え、内製へ引き渡すところまで含みます。

マニュアルの品質は、誰が責任を負うのか

4つの役割のうち、いちばん曖昧になりやすいのが「保証する」です。独立して見ていきます。

AIで下書きを作成しただけでは、責任者は決まらない

マニュアルは、読んだ人が実際に手を動かすための文書です。誤った手順が載っていれば、作業の失敗や事故につながります。

下書きは数分で作成できます。ただし、その内容が正しいと誰が判断するのかは、あらかじめ決めておく事項です。AIは責任を負いません。下書きの作成が速くなったことで、責任者を決めないまま先へ進むリスクが生じます。

AIは品質をそろえられない

AIで作ったマニュアルの品質にばらつきが出るという声をよく聞きます。専門用語が正しく使われているかを、AI自身は確認できません。業界固有の慣習や暗黙知は、そもそも学習の対象になっていません。

ばらつきがあること自体は問題ではありません。問題は、品質を誰がそろえるのかが決まっていないことです。

決めるべきことは2つある

ひとつは、社内で誰が確認して合格を出すかです。作成の担当者とは別に、記載内容と業務の実態を照合する人を決めます。外部に委託する場合も、検収の工程として残ります。

もうひとつは、委託先がどこまで責任を負うかです。責任の範囲は会社によって違うため、契約書や利用規約で確認しましょう。

フィンテックスの場合は、サービス利用規約で定めています。「AIツールの利用の有無にかかわらず、成果物の品質について責任を負う」という条項です。AIの出力に誤りが含まれていた場合も、当社の責任で是正します。あわせて、納品物はお客様に検収していただく建てつけです。作成側が品質に責任を負い、発注側が検収で確認する二段構えになります。

なお、契約に関する記述は一般的な情報であり、法的助言ではありません。委託先との契約内容は、自社の法務部門にご確認ください。

※参照:フィンテックス「サービス利用規約」

経営判断として何が変わるのか

決裁者の立場から見ると、マニュアル作成におけるAI活用について押さえておきたい点は3つあります。

判断する人を先に決めておく

AIの活用により下書きは短時間で作成できます。ただし、構成をどうするか、どこまで書くかについて社内の判断が固まらないと、作成はその段階で止まります。AIツールの導入より先に、判断する人と判断の場を用意しておくことが大切です。

判断の対象は、文書の書き方ではなく業務の進め方そのものです。そのため、現場だけでは結論が出ないこともあります。あらかじめ承認者を決めておくと、作成の工程が止まりません。

機密情報の扱いとAI利用の方針を固める

マニュアル作成では、業務の手順や取引先の情報など、社外に出しづらい機密情報を扱います。AIを使うかどうかは、情報管理の方針として判断すべき事項です。社内で作る場合も、外部に委託する場合も同じです。

社内で作る場合は、どの情報までAIに入力してよいかを整理し、関係者に共有しておきましょう。個人情報の扱いは、とくに線引きが必要です。

外部に委託する場合は、AI利用の可否を選べるかを確認しておきましょう。どの工程でAIを使うのか、使わない体制も用意があるのかを聞いておくと安心です。フィンテックスの場合は、どちらも選べます。

関連記事:
フィンテックスのAI活用に対する考え方

人手が減る前提で、整備の順番を考える

国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年の生産年齢人口は2020年比で約1,300万人減る見通しです。経済産業省の調査では、IT人材が2030年に最大約79万人不足するとされています。

一方で、生成AIの活用方針を定めている日本企業は約半数(49.7%)にとどまります(総務省調査)。AIの利用が広がる速さに、社内の方針づくりが追いついていない状況です。

人手が減る前提に立つと、マニュアル整備は「余裕ができたら着手する仕事」ではなくなります。加えて、業務手順が文書として整っていない状態では、AIに任せられる範囲も広がりません。AI活用の準備という意味でも、マニュアル整備の優先順は上がります。

人手不足とAI活用が同じ時期に進む状況は、別記事で詳しく整理しています。

関連記事:
2030年、あなたの会社の業務は誰が回すのか

※参照:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」/経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/総務省「令和7年版情報通信白書」

よくある質問(FAQ)

Q:AIで下書きを作れば、マニュアル作成代行会社に頼む範囲は狭くできますか?

A:依頼する範囲は狭くできます。ただし、狭められるのは執筆の工程です。素材の整理と内容の確認は残ります。下書きを社内で作り、構成の設計と品質の確認だけを委託するのも一案です。どこまでを委託したいのかを整理して相談すると、進め方が決めやすくなります。

Q:AIを使えばマニュアル作成代行の費用は安くなりますか?

A:一概には言えません。見積の算出方法は会社によって違います。ページ数や取材回数で出す場合もあれば、作業時間で出す場合もあります。AIを活用した場合の考え方も、各社が模索している段階です。

Q:マニュアル作成代行会社に依頼したあと、更新は自社でできるようになりますか?

A:できます。更新の担当者と頻度、改訂の承認ルートを、あらかじめ設計時に取り決めておくことが条件です。表記ルールとテンプレートを納品物に含めてもらうと、社内での改訂が進めやすくなります。契約の段階で「更新の内製化まで委託範囲に含めるか」を確認しておきましょう。

Q:まず内製で試して、うまくいかなければ外注に切り替えてもよいですか?

A:問題ありません。内製で試すと、決めるべき事項と現場から引き出せていない情報が明らかになります。その整理は外部に委託する場合も無駄になりません。ただし、担当者が異動や退職で入れ替わると振り出しに戻るため、着手時点で判断の記録を残しておくことをおすすめします。

まとめ

AIでマニュアルの下書きが作れる時代になっても、マニュアル作成代行サービスは残ります。AIで工数を削減できたのは、下書きまでの作業だけです。決める・引き出す・保証する・続かせるという4つの工程は、AIの活用に関係なく人が引き受けます。

判断すべきことは、外注するかどうかではなく、どの工程を誰が担うかです。まずは自社の業務手順のうち、判断基準が文書になっていない部分を洗い出すところから始めてみましょう。整備の順番が見えれば、AIに任せられる範囲もおのずと決まります。

フィンテックスは、言葉になっていない判断基準の言語化を得意としています。事実を文書にするだけでなく、それぞれの現場と読み手に合う形に整えるところまでが仕事です。AIでは代替できない部分に、長年の経験が生きます。

マニュアルを整備したい、マニュアル整備にAIを活用したいが、どこから手をつけるべきか迷っているという方は、お気軽にご相談ください。

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フィンテックスは1987年の創業以来、500社以上の業務マニュアル・操作マニュアル作成を支援してきたマニュアル作成の専門会社です。

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関連記事:
ハナスマのサービス紹介
フィンテックスのAI活用に対する考え方
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監修者

監修者の写真

中丸 貴仁

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)

<略歴>

フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。 金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。 趣味は茶道。
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php

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