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生成AIの登場以降、AIは「答えを返す道具」から「業務を実行する存在」へと役割を広げつつあります。一方で、現場には「AIをどう使えばよいかわからない」「自社の業務にAIを当てはめるイメージが湧かない」という声も少なくありません。
2030年に向けて少子高齢化と人材不足はさらに進み、限られた人数で業務を回さなければならない局面が増えていきます。経済産業省の試算では、IT人材だけでも2030年に最大約79万人が不足する可能性が示されており、IT職以外の現場でも人手不足は深刻化していくと見込まれています。その際に企業の競争力を分けるのは、最新のAIをいくつ導入しているかではなく、業務がAIに「渡せる状態」になっているかどうかです。
本記事では、AIが実行する時代に企業の現場で何が起きているのかを公的データを交えて整理したうえで、AIに任せられる業務とそうでない業務の違い、その境目をつくる「構造化」の意味、そして構造化の第一歩であるマニュアル整備の進め方について解説します。
目次
AIが「実行」する時代に何が起きているか
AI化できる業務とできない業務の違いは何か
「構造化」されていない業務はAIに渡せない
構造化の第一歩は、言語化・明文化=マニュアル作成
マニュアル作成を外注することで何が変わるか
フィンテックスの事例・アプローチ
まとめ
これまでのAIは、文章を要約したり、データを分類したりと「補助する」立ち位置にありました。ところが2024年以降、AIエージェントと呼ばれる仕組みが普及し、AIが自ら手順を組み立てて業務を遂行する場面が増えています。
たとえば、定型の問い合わせ一次対応、見積書のドラフト作成、議事録の整形、申請書類のチェックといった業務は、AIに渡せば数十秒で結果が返ってくる時代になりました。Microsoft365 CopilotやGoogle
Workspaceのアシスタント機能のように、社員が日常的に使うアプリケーションにもAIが組み込まれています。
つまり、AIはもはや特定部署のIT施策ではなく、すべての社員の働き方を変える前提条件になりつつあります。
2030年問題として広く語られているのは、生産年齢人口の減少です。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、生産年齢人口(15〜64歳)は2020年の約7,509万人から2040年には約6,213万人まで減少する見通しで、2030年はその減少の途上にあたります。
働き手が減る一方で、医療・介護・物流・販売など、人の手が必要な業務の需要は増えていきます。これは、これまでと同じ業務量を同じ人数でこなせなくなる、という現実的な制約です。
中小企業庁が公表する「中小企業白書」でも、人手不足を経営課題として挙げる中小企業の割合は近年高止まりしており、特にサービス業・建設業・運輸業で深刻化していることが示されています。採用市場を頼りにするだけでは、業務量を支えきれなくなる局面が現実味を帯びています。
ここで押さえておきたいのは、人手不足が深刻化するのと同じ時期に、AIによる実行の選択肢が広がっているということです。つまり、企業は「人を増やせない/AIは使える」という条件のもとで、業務をどう設計するかという問いに直面しています。
2030年に向けた事業設計を考えるうえで、まず押さえておきたい公的データが3つあります。
これらは別個の数字ではなく、いずれも「人で支える前提が崩れる時代がもうすぐ来る」という同じ事実を、別の角度から示しています。
※参照:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」/中小企業庁「中小企業白書」
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これからの数年で重要になるのは、「誰がこの業務を担当するか」ではなく、「この業務は誰(あるいは何)が担当するのが最適か」を考える視点です。人にしかできない業務に人を集中させ、AIに任せられる業務はAIに渡す。そのためには、まず自社の業務を仕分けできる状態にしておく必要があります。
AIに任せられる業務と、人が担当すべき業務には明確な境目があります。違いを生み出しているのは、業務の難しさそのものではなく、業務の「説明のしやすさ」です。
AIは、入力と出力の関係がはっきりしている業務を得意とします。
たとえば、申請書類のフォーマットチェック、定型の社外メール作成、過去のFAQに沿った一次回答などは、ルールと判断基準が明文化されていれば、AIに任せやすい業務です。手順と判断基準が言語化されていれば、AIはそれを読み取って実行できます。
一方で、ベテラン社員の経験や勘に頼っている業務は、AIに渡すのが難しい領域です。
「お客様の表情を見て提案を切り替える」「現場の状況に応じて優先順位を入れ替える」といった業務は、判断の根拠が言語化されていません。AIは、与えられた情報からしか動けないため、暗黙知のままの業務は、人が引き続き担当することになります。
ここで押さえておきたいのは、ある業務をAIに渡せるかどうかを決めているのは、AIの性能ではなく、その業務が言葉で説明できる状態にあるかどうかだという点です。AIの能力が伸びても、業務側に「説明書」がなければ、AIは入り込めません。
つまり、AI化の成否は、テクノロジーの問題ではなく業務設計の問題です。
ここで鍵となる考え方が「構造化」です。構造化とは、業務をいくつかの要素に分解し、誰がいつ何をするのか、どんな判断基準で進めるのかを整理して、再現できる形にすることを指します。
社内の業務を見渡してみると、特定のベテラン社員が一手に引き受けている業務、退職や異動の話が出るたびに「あの人がいなくなったら回らない」と心配される業務がひとつやふたつはあるはずです。これは、業務が個人の頭の中にしか存在せず、組織の資産になっていない状態です。
このような業務は、人へ引き継ぐのも難しいうえに、AIへ渡すこともできません。AIに頼める形にするには、その人の頭の中を、まず誰の目にも見える形に取り出す必要があります。
業務が構造化されていれば、新人にもベテランにも同じように引き継げますし、必要に応じてAIに任せることもできます。逆に言えば、人への引き継ぎがうまくいかない業務は、AIへの引き継ぎもうまくいきません。
属人化を解消することと、業務をAIに渡せる状態にすることは、根っこのところでつながっているのです。
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業務を構造化するための入口となるのが、マニュアル作成です。マニュアルは新人教育のためだけの資料ではありません。業務を言語化し、明文化することそのものが、企業にとっての構造化の第一歩になります。
マニュアルを作るとき、まず行うのは業務を細かく分解することです。
「誰が」「いつ」「何をするのか」「何を判断材料にするのか」「成果物は何か」を、ひとつずつ書き出していきます。この作業は地味ですが、業務を構造化するうえでもっとも重要な工程です。手を動かして書き出してみると、ベテランが感覚で行っていた判断や、社内で曖昧なまま運用されていたルールが浮かび上がってきます。
マニュアルを作っただけで運用がうまくいくわけではありません。形式だけ整えて棚に置かれてしまうマニュアルもあれば、現場で日々参照される生きたマニュアルもあります。
両者を分けるのは、現場のリテラシーや業務フローに合わせて設計されているかどうかです。手順と判断基準を切り分けて整理する、必要な情報にすぐたどり着ける構造にする、現場の声を反映して改訂し続ける――こうした工夫の積み重ねが、使われるマニュアルを生みます。
業務手順と判断基準が明文化されていれば、社内の生成AIに読み込ませて一次回答を作らせる、ドラフトを書かせる、チェック作業を任せる、といった応用も比較的スムーズに進みます。マニュアル整備は、人材育成のためだけでなく、AI活用の前提条件でもあると捉えることが大切です。
マニュアル整備の重要性は理解していても、「現場が忙しくて手が回らない」「自社で書くと結局自分目線になってしまう」といった理由で進められない企業は少なくありません。こうした場合、外部の専門会社にマニュアル作成を委託するという選択肢があります。
社内でマニュアルを作る場合、業務知識のあるベテランや管理職に作業が集中しがちです。結果として、通常業務とマニュアル作成の双方が中途半端になるケースもよく見られます。
外注すれば、ヒアリングと素材提供だけで構造化の作業を進められるため、現場は本業に集中できます。経営の視点で見たときに、社員の時間を本来の付加価値の高い業務に向けられることは大きなメリットです。
社内の人だけで業務を書き出そうとすると、「これは当たり前すぎて書くまでもない」と思われている内容が抜け落ちがちです。しかし、その「当たり前」の中にこそ、新人がつまずくポイントや、AIへ渡す際に必要な前提条件が眠っています。
第三者がヒアリングを担当することで、社内の人には見えなかった暗黙知が引き出され、誰もが再現できる形に整理できます。
マニュアル作成のプロは、新任者や非専門職など、読み手のリテラシーレベルに合わせた表現を意識して設計します。社内の人が書くと、つい同じ部署のメンバーを想定して専門用語を多用してしまいがちですが、外注された設計者は読み手目線で構造を組み立てます。
その結果、マニュアルは現場で使われ、教育コストの削減にもつながります。
フィンテックスでは、こうした外注のメリットを小さく体験できるサービスとして「ハナスマ」を提供しています。50分のヒアリングに答えるだけで、AIとマニュアル専門ライターが連携して業務マニュアルを仕上げる仕組みです。「まずは形にしてみたい」「予算と時間に限りがある」という場合の選択肢のひとつです。
関連記事:
話すだけでマニュアルが作れる「ハナスマ」について
マニュアル作成を外注する際の費用相場を徹底解説
フィンテックスは1987年の創業以来、500社以上のマニュアル作成を支援してきました。金融、エンターテインメント、流通、製造、官公庁関連まで、幅広い業界の業務を言語化し、現場で使われるマニュアルに仕上げています。
私たちが大切にしているのは、単に手順を書き起こすことではなく、「なぜその作業を行うのか」「その判断はどのような前提に基づいているのか」までヒアリングで掘り下げ、業務の構造そのものを可視化することです。第三者だからこそ気づける暗黙知を丁寧に拾い、現場のリテラシーに合わせて再構成します。
また、フィンテックスではAI活用について「お客様にAI活用の可否を選んでいただく」方針を採っています。AIを活用する場合も、安全性と信頼性を確認したうえで、長年培った制作ノウハウを踏まえて品質を担保します。AIを活用しない選択をされたお客様にも、従来どおりの体制で対応します。
つまり、マニュアル整備を通じて業務の構造化を進めつつ、その先のAI活用についてもお客様のご意向に沿って併走できる、というのが当社の立ち位置です。
関連記事:
フィンテックスのAI活用に対する考え方
マニュアル作成の枠を超えたご支援事例を紹介①
フィンテックスの制作実績約500件について調査・分析してみた
2030年に向けて、人手不足とAI活用は同じ時期に進みます。そのときに業務を回せる企業と回せない企業を分けるのは、AI導入の早さではなく、業務がAIにも人にも渡せる構造になっているかどうかです。
そして構造化の第一歩は、特別なシステム投資ではなく、業務を言語化してマニュアルとして残すという、地に足のついた作業です。今この瞬間にマニュアル整備に着手しておくことが、3年後、5年後の競争力につながります。
完璧を目指す必要はありません。業務量の多い領域、属人化しているベテランの業務、新人がつまずきやすい業務など、効果が見えやすいところから始めてみましょう。
フィンテックスでは、マニュアル整備のためのコンサルティングと、業務マニュアル・操作マニュアルの作成代行を行っています。AIに渡せる業務の前提づくりとしてのマニュアル整備にご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
監修者

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php
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