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マニュアル作成の現場では、「マニュアルはあるのに、結局いつも同じ人に質問が集中している」「生成AI(文章などを自動で作る人工知能)で作ってみたが、直しに追われている」といった声をよく耳にします。
では、こうした感覚は数字で見るとどの程度実態に即しているのでしょうか。フィンテックスは2026年7月29日から8月2日にかけて、全国の企業で働く800名を対象に「マニュアル作成実態調査」を実施しました。
結論からお伝えすると、浮かび上がったのは、マニュアルが「作れるか」ではなく「使われ続けるか」を問われているという実態です。
本記事では、調査から見えた業務マニュアルとAI活用のリアルを、データとともに解説します。
目次
調査の概要
【結果1】マニュアルがあっても、79.9%は「人に聞いた方が早い」
【結果2】7割が運用の問題を抱え、55.3%が属人化を実感
【結果3】経営と現場の「認識の断絶」:中小企業で2.2倍の差
【結果4】AI活用は57.1%へ。しかし「そのまま使える」は10.1%
【結果5】マニュアル作成は「評価されない仕事」:負担59.4%、評価実感32.0%
【考察】データが示す「4つの落とし穴」と、これからの向き合い方
よくある質問(FAQ)
まとめ:「作れる時代」だからこそ、「使われ続ける仕組み」を
本調査は次の設計で実施しました。企業規模と役職で回答者を均等に割り付け、立場による認識の違いを比較できるようにした点が特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査内容 | マニュアル作成実態調査(2026年) |
| 調査期間 | 2026年7月29日〜8月2日 |
| 調査対象 | 全国20〜69歳の会社員・経営者/役員のうち、勤務先に業務マニュアル・手順書等が存在する方 |
| 有効回答数 | 800名(中小企業/大企業 × 部長以上/部長未満 = 各200名の均等割付) |
| うち作成経験者 | 522名(直近1年以内にマニュアルの作成・改訂を経験) |
| 調査主体 | 株式会社フィンテックス |
| 調査委託先 | 株式会社クロス・マーケティング |
| 調査方法 | インターネット調査 |
なお、本調査の対象は「マニュアルが何らかの形で存在する企業」の勤務者です。マニュアルが一切ない企業は含まれていないため、実際の課題は本調査の数字より広い可能性もあります。構成比は四捨五入している関係で、合計値が100.0%にならない場合があります。
勤務先にマニュアルや手順書がある状況で、「知っている人に直接聞いた方が早い」と思うことがあるかを尋ねました。結果は「常にそう思う」12.0%、「そう思うことが多い」34.1%、「時々そう思う」33.8%で、合計79.9%に達しました。
利用頻度のデータも、この結果を裏づけています。マニュアルを週1回以上利用する人は21.1%にとどまり、「使っていない・わからない」が51.8%と半数を超えました。マニュアルの整備が進んでいる企業でも、週1回以上の利用は27.5%止まりです。

注目したいのは、5.4%が「そもそも周囲に質問できる人がいない環境」と答えている点です。マニュアルも人も頼れない、いわば孤立した状態で業務にあたっている層が一定数存在します。人に聞ける職場はまだ恵まれているとも言えますが、その質問対応が特定のベテランに集中しているなら、次項で説明する「属人化」の問題が大きくなっているかもしれません。マニュアルが読まれない背景には、後述する「探せない」「古い」という管理・更新の問題が重なっています。マニュアルを読む前の段階で「見つからない」「古くて信用できない」といった理由でつまずくため、確実な答えが返ってくる「人への質問」へ流れるのは、構造としては合理的な行動です。
「人への質問」が多発する状況は、相手の時間を奪い、業務効率を下げてしまいます。本来は、マニュアルを読むことで自己解決すべきものです。
「人への質問」が常態化しているのは改善すべきですが、それをマニュアルを読まない個人の意識ではなく、会社としての仕組みの問題として捉えることが大切です。
現在のマニュアル運用で実際に起きている問題を尋ねたところ、71.0%が何らかの問題を抱えていました。最も多かったのは「格納場所がわかりにくく、必要な時にすぐ見つけられない」19.5%です。「作成されたきり、長期間更新されず放置されている」18.4%、「現場の業務実態と内容がズレている」18.0%が続きます。
これまでに経験した不満でも、1位は「格納場所がわからず、探すのに時間をロスした」23.0%です。内容の巧拙以前に、「探せない」「古い」「実態とズレている」という管理・運用の問題が上位を占めている点が特徴的です。

また、「特定の人しかわからない業務(属人化された業務)が多い」と感じる人は55.3%に達しました。
属人化を「多い」と感じる層では、マニュアルの不足や形骸化によるトラブル経験数が平均2.16個でした。属人化を「多くない」と感じる層の平均0.71個と比べて、約3倍ものトラブルを経験していることになります。
担当者不在で一部の業務が止まった経験も、属人化を「多い」と感じる層では20.8%が経験したと回答しています。
見逃せないのは、マニュアルの整備率と属人化の実感に、ほぼ関連が見られなかったことです。「多くの業務で整備されている」企業でも、属人化を多いと感じる人は57.0%に達します。「個人レベルの手順書しかない」企業でも属人化を多いと感じる人は52.3%で、両者の差はわずかでした。
マニュアルを作れば属人化が解消する、という単純な図式をデータは支持していません。整備の有無よりも、使われ方・作られ方・運用のあり方が問われていると考えられます。
ただし、例外的に差が出た切り口があります。整備方法別に見ると、親会社やグループ共通の指定マニュアルを使う企業では、属人化が「多い」は38.7%と全体(55.3%)を大きく下回りました。
単に文書が存在することではなく、組織を横断する「共通の標準」として運用されていることが、属人化の抑制と関連している可能性があります。
属人化のメカニズムについては、
「属人化とは?その原因と対策のポイントを、業務マニュアル作成のプロが解説」で詳しく解説しています。
今回の調査で最も大きな差が出たのが、役職による認識の違いです。「マニュアル運用の問題は特に起きていない」と答えた割合を、役職別・企業規模別に見てみましょう。中小企業(従業員300人以下)の役員以上は51.4%でした。一方、同じ規模の課長以下は23.5%です。実に2.2倍の開きがあります。
「トラブルは特に発生していない」という回答も、同じ構造を示しています。中小企業の役員47.7%に対して課長以下は16.0%と、3.0倍の差です。大企業では役員31.1%・課長以下21.5%と差が小さく、認識の断絶は中小企業でより深刻に表れました。

では、なぜ役員には問題が見えにくいのでしょうか。データはひとつの手がかりを示しています。
役員のうち73.4%は、マニュアルを「使っていない・利用頻度がわからない」と回答していました。マニュアルを使っていない役員では「問題は特にない」が53.1%にのぼります。そして、月1回以上マニュアルを使う役員に限ると17.2%と、現場とほぼ同じ水準まで下がりました。
つまり、楽観の正体は役職そのものではなく、「現場との距離」にあると考えられます。
マニュアルの問題は日常業務の中でしか見えません。「あの業務のやり方を知りたいのに、マニュアルが探せない30分」や「業務手順を口頭で教える1時間」は、売上や利益と違って経営データに現れないのです。
本調査は横断調査のため因果関係の断定はできませんが、経営層と現場でマニュアルに関する景色が大きく異なることは、数字がはっきりと示しています。
マニュアルの作成・運用プロセスでのAI活用は、57.1%に達しました。内訳は「積極的に活用」26.9%、「一部で活用」20.8%、「試験・検証中」9.5%です。生成AIの業務利用が広がるなか、マニュアル分野でも活用は既に当たり前になりつつあります。
ただし、企業規模で見ると大企業66.0%に対して中小企業48.2%と、18ポイントの差が開きました。
経済産業省「IT人材需給に関する調査」では、IT人材が2030年に最大約79万人不足すると推計されています。人手不足が深刻な中小企業ほどAIの恩恵が必要なはずですが、現実は逆の構図です。AIの活用が進まない理由も、「自社の業務とAIをどう統合すればよいか、運用ノウハウがない」23.4%と「使いこなせる人材の不足」19.9%が上位で、「品質への不安」17.2%を上回りました。ツールの品質よりも、そもそも使いこなせないという問題が壁になっているようです。
そして本調査で最も示唆的な数字が、AI原稿の実用度です。生成AIが作成したマニュアル原稿を「そのまま使える」と評価した人は、10.1%にとどまりました。「半分くらいは手直しが必要」39.8%と「ほぼ一から作り直す必要がある」10.1%を合わせると、約半数が大幅な修正を前提としています。

ここでも役職差が現れました。「そのまま使える」と答えた役員以上は21.1%、課長以下は6.7%と、3.1倍の開きがあります。「AIで済むはずだ」という経営側の期待と、出力の検証・手直しに追われる現場。この認識の断絶が、マニュアル作成という業務への正当な評価を妨げているとも言えます。
さらに、生成AIでマニュアル作成を試みた人の91.0%が、何らかの「AIだけでは解決できない」限界を経験していました。最多は「誤りがないか、時間をかけて確認(検算)・修正せざるを得なかった」33.7%です。「現場の担当者にとって分かりやすい構成・表現になっていなかった」33.1%が僅差で続きます。
「イレギュラー対応や例外処理の記述が抜け落ちた」と「暗黙知(言語化されていないノウハウ)をうまく言語化してくれなかった」も、それぞれ28.4%にのぼりました。
AIを使い込んでいる積極活用層ほど「読み手にとっての分かりやすさ」の壁に直面している点も、興味深い結果でした。
もうひとつ、見過ごせないデータがあります。作り手の負担と評価の問題です。
直近1年以内にマニュアルの作成・改訂を経験した522名のうち、59.4%が作成・更新業務を「負担に感じる」と答えました。負担の内訳で最も多いのは「通常業務が忙しく時間を確保できない」19.9%でした。「業務の変更に合わせたタイムリーな更新が難しい」19.7%が、ほぼ並びます。「どこまで詳細に書くべきか、情報量の加減がわからない」19.0%も上位に入りました。
一方で、マニュアル業務が「適切に評価されている」と感じる人は32.0%にとどまりました。「どちらともいえない」が42.0%と最も多く、評価の仕組み自体が存在しない職場が多いことをうかがわせます。
作成にかかる時間の認識も、立場によって差が出ました。マニュアル1件あたりの作成時間について、作成経験者の22.6%は「5時間以上」と回答しています。1件が1営業日仕事になるケースも珍しくありません。ところが、作成経験のない人の36.3%は所要時間を「わからない」と答えました。かかっている時間が組織に把握されていない、いわば「見えない仕事」になっているのです。負担が大きく、評価されず、コストも見えない。マニュアル作成の担い手を支える仕組みづくりは、多くの企業で手つかずの領域と言えるでしょう。
一方で、対照的なデータもあります。マニュアル整備の方法別に見ると、外部の専門会社の支援を受けながら内製している企業では「評価されている」が54.3%でした。生成AIを全面活用した内製でも50.5%と、いずれも全体(32.0%)を大きく上回ります。マニュアルに方法と投資を持つ職場ほど、その業務が「見える仕事」として評価される傾向がうかがえるでしょう。
【資料】調査の全データをホワイトペーパーで公開中
ここまでご紹介したのは、800名への調査結果の一部です。役職別・企業規模別の詳しいクロス集計や、全22設問の結果は、ホワイトペーパー「マニュアル作成 実態調査 2026」にまとめています。
資料を無料でダウンロードする
調査結果を業務プロセスに沿って整理すると、AI時代のマニュアル作成の課題は4つの局面に集約されます。私たちはこれを「4つの落とし穴」と呼んでいます。
4つの落とし穴は、どれか1つを塞げばよいものではありません。入力から運用までは一続きの流れです。どこか1か所が欠けるだけで、「使われないマニュアル」が再生産されてしまいます。
外部支援のニーズにも、この構造が表れています。外部の力が必要な領域の1位は「定期的な更新・メンテナンス」25.1%で、執筆そのものよりも「続ける」ことへの支援が求められていました。しかも、外部支援の必要性を感じる割合はAI活用層で64.8%と、未活用層33.4%の2倍近くにのぼります。AIを使った企業ほど、AIだけでは埋まらない領域を自覚している。これが2026年現在のマニュアル作成の最新実態と言えるでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年の生産年齢人口は約6,213万人と、2020年から約1,300万人減少する見通しです。人に聞ける環境は、これから確実に細っていくでしょう。
「人に聞いた方が早い」が8割の今のうちに、聞かれている内容を仕組みに変えられるかどうかが、企業の分かれ道になると私たちは考えています。業務の言語化から始める進め方は、「業務の構造化とは何か?マニュアル整備から始めるAI活用の道筋」で解説しています。あわせて「マニュアル作成の基本のフローとは?運用ルールの作成」とともに解説も参考にしてください。
【無料配布中】調査レポート「マニュアル作成 実態調査 2026」
本記事で解説した「4つの落とし穴」も含め、全22設問の結果を1冊にまとめたホワイトペーパーを無料で配布しています。社内での説明資料としてもご活用いただけます。
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※参照:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」/国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」/IPA「DX動向(DX白書)」
出典を明記いただければ、引用・転載が可能です。記載例は「マニュアル作成代行のフィンテックスが実施した『マニュアル作成 実態調査 2026』によると」の形です。調査名と当社名の明記をお願いします。報道関係の方のお問い合わせも受け付けています。
全国20〜69歳の会社員・経営者/役員800名です。従業員300人以下の中小企業と301人以上の大企業、部長以上と部長未満で、各200名ずつ均等に割り付けました。立場による認識差を比較できる設計です。勤務先にマニュアルや手順書が何らかの形で存在する方を対象としています。
本記事で紹介しきれなかったグラフや全設問の結果は、ホワイトペーパーにまとめています。タイトルは「マニュアル作成 実態調査 2026|マニュアル作成における経営層に見えない現場の実態と、生成AI活用の4つの落とし穴」です。当サイトのダウンロードフォームから無料で入手いただけます。
そうではありません。調査でも57.1%が既にAIを活用しており、下書きの速さは大きな武器です。ただし「そのまま使える」は10.1%にとどまります。業務の言語化・読み手に合わせた設計・出力の検証・更新運用という「AIが担えない部分」は、人が設計することが前提です。自社での対応が難しい場合は、外部の専門家に相談するのもひとつの方法と言えるでしょう。
今回の調査が示したのは、マニュアルの課題が「作る」から「使われ続ける」へ移っているという事実でした。8割が人に聞いた方が早いと感じ、7割が運用の問題を抱え、AI原稿はそのままでは使えない。
そして、その実態は経営層から見えにくい。どれも、マニュアル整備を「作って終わり」で考えてきた組織に共通する構造です。
なお、今回の調査結果は、社内での説明資料としてもご活用いただけます。経営層と現場の認識合わせの材料として、まず数字を共有するところから始めるのもひとつの方法です。
フィンテックスは1987年の創業以来マニュアル作成を専業とし、サービス提供社数は500社以上・マニュアル作成数は10,000冊以上の制作実績があります。業務の棚卸しから読み手設計、品質の判断、更新運用まで、本調査が示した4つの落とし穴を人とAIの両輪で回避する体制を提供しています。
本調査に関するご質問や、マニュアル作成・運用のご相談がございましたら、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
外注をご検討の際は、「マニュアル作成をはじめてアウトソーシング(外注)される方へ」をご覧ください。「マニュアル作成代行を依頼した場合の費用の考え方」も参考になります。
監修者

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php
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