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作業を撮影した動画があるのだから、ここからマニュアルを自動で作れないものか。そう考えたことはありませんか。生成AIの普及により、動画から手順書やマニュアルの下書きを自動生成する技術が実用の段階に入り、検討する企業が増えています。
ただし、自動生成されたものをそのまま配布するのは危険です。誤った手順が現場に広まるおそれがあります。本記事では、動画からAIでマニュアルを自動生成する仕組みとツールの類型、具体的な手順を解説します。あわせて、AIだけでは文書化できない限界と、品質の確認方法も整理しました。1987年の創業以来マニュアル作成を続けてきたフィンテックスの、実務にもとづく内容です。
目次
動画からAIでマニュアルを自動生成する仕組みとは
自動生成ツールの2つの類型|画面録画型と動画解析型
動画からマニュアルを自動生成する5つの手順
自動生成の限界|AIだけでは文書化できない5つのこと
生成物の品質チェック|公開前に確認したい5つの観点
よくある質問(FAQ)
フィンテックスの動画とAIを組み合わせた取り組み
まとめ
動画からのマニュアル自動生成は、おおむね次の3つの処理の組み合わせで成り立っています。
つまりAIは、動画に映っている操作と、語られている説明を材料に、手順書の形へ並べ替えているわけです。ここから分かるのは、動画に映っていないことと、語られていないことは文書にならないという点です。この特性が、後述する限界の根本にあります。
なお、本記事のテーマは、動画マニュアルの作成ではありません。動画マニュアルが文書(文字+図)の代わりに動画で必要な情報を伝える手法であるのに対し、本記事が扱うのは、動画を素材にして文書のマニュアルをAIで作る手法です。両者は対立するものではなく、同じ素材から動画と文書の両方を作る運用もできます。動画マニュアルそのものの作り方は、次の記事をご覧ください。
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背景にあるのは人手不足です。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年の生産年齢人口は約6,213万人まで減少する見通しとされています(令和5年推計)。これは複数の仮定にもとづく推計であり、確定した数値ではありません。それでも、教育や引き継ぎにかけられる人手が限られていく方向にあることは確かでしょう。
ベテランの作業を撮影しておけば、マニュアル化の手間が省けるのではないか。こうした期待が高まるのは自然なことと言えます。
※参照:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
動画からマニュアルを自動生成するツールは数多く登場していますが、仕組みで整理すると大きく2つの類型に分けられます。本記事では特定の製品の評価には踏み込まず、類型ごとの特徴を中立に整理します。
PCでの操作をツールが録画しながら、クリックや画面の切り替わりを検知し、手順の区切りと画面の画像を自動で切り出す方式です。システムの操作マニュアルや、ツールの利用手順書と相性がよく、操作しながらマニュアルの骨格ができあがります。
一方で、対象はPCやスマートフォンの画面内の操作に限られます。接客や機械の操作など、画面の外で行われる業務には適用できません。
研修動画や撮影済みの作業動画をアップロードすると、AIが文字起こしと場面の分割を行い、手順書の下書きを生成する方式です。現場作業や実技を含む業務も対象にでき、過去に撮りためた動画を活用できる点が特徴です。
ただし、動画の撮り方や音声の聞き取りやすさによって、生成される品質が大きく変わります。雑音が多い動画や手元が映っていない動画から、精度の高い下書きを生成するのは難しいでしょう。
| 観点 | 画面録画型 | 動画解析型 |
|---|---|---|
| 得意分野 | 操作マニュアル・システムの手順書 | 作業手順書・研修内容の文書化 |
| 対象業務 | PCや画面上の操作 | 現場作業を含む幅広い業務 |
| 素材 | その場で録画する操作 | 既存または新規の動画ファイル |
| 生成されるもの | 手順文と画面の画像 | 手順文、場面ごとの画像、文字起こし |
| 留意点 | 画面の外の業務は対象外 | 動画の撮影品質に精度が左右される |
このほか、汎用の生成AIに動画の文字起こしデータを渡し、マニュアルの原稿を生成する方法もあります。専用のツールを導入する前に、手持ちの動画1本で試してみると、自社の業務との相性を確かめられるでしょう。
なお、多くのツールはクラウド型のため、業務の動画や操作の記録を外部のサービスへ預けることになります。データの保存場所や、AI学習への利用有無を規約で確認することが導入判断の前提です。社内ルールの整備にあたっては、経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が公開しているサイバーセキュリティ経営ガイドラインも参考になります。
※参照:経済産業省・IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」
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ここまでで、どの類型のツールが自社に合うかの見当がついたのではないでしょうか。次は、実際にマニュアルを作る流れを確認します。以下の5つの手順のうち、自動生成ツールが担うのは手順3の下書き生成が中心です。前後の手順は、ツールの種類にかかわらず人が行います。
最初に決めるのは、誰が、いつ、何のために読むマニュアルかという点です。読み手は1人の具体的な人物像、いわゆるペルソナとして定めておきましょう。新人教育に使うのか、経験者の備忘に使うのかによって、必要な説明の細かさも用語の水準も変わります。ここがあいまいなままAIに生成させると、誰に向けたものでもない文書ができあがってしまいます。
この手順にツールは関与しません。撮影を始める前に、社内で決めておく内容です。
自動生成の品質は、素材となる動画の品質でほぼ決まります。撮影の際は、次の点を意識しましょう。
とくに効果が大きいのは、2つ目に挙げた、声に出しての説明です。なぜこの順番なのか、何を見て判断しているのかを言葉にしておくと、文字起こしを通じて下書きに反映されます。逆に、無言で作業した動画からは、操作の羅列しか生成されません。
撮影の前に、話す内容を簡単に決めておくのもおすすめです。各工程で、何をするか、なぜそうするか、うまくいかない場合はどうするかの3点を話す、と決めておくだけでも下書きの内容が変わります。
ツールに動画を取り込み、手順書の下書きを生成します。ここで重要なのは、生成物を完成品ではなく下書きとして位置づけることです。
フィンテックスでは、この考え方を「AIで6割、プロで10割」と表現しています。6割という数字は、作業量のおおよその目安です。具体的には、文字起こし、手順の区切り、画面画像の切り出し、手順文の下書きまではAIが担えます。一方で、判断基準の聞き取り、例外対応の補足、全体の構成設計、用語の統一、公開してよいかの判断は人の担当です。
生成された下書きを、業務を知っている人と、マニュアルの品質を判断できる人が確認します。手順の誤りや抜けの修正、用語の統一、例外対応の追記など、この工程が品質を決めます。具体的な観点は、後述の「生成物の品質チェック」の章で整理しました。
なお、生成された下書きをそのまま編集できる機能を備えたツールもあります。編集の履歴が残る形であれば、誰がどこを直したかを後から確認できるため、複数人での確認がしやすくなるでしょう。
完成したマニュアルは、読み手が探せる場所に配置します。あわせて、業務や画面が変わったときに更新する運用ルールも決めておきましょう。
動画からの自動生成は、更新の場面でも使えます。画面が変わったら録画し直し、下書きを再生成して、人が変更箇所を確認する。この流れを改訂の手順として決めておくと、更新が滞りにくくなるでしょう。
動画からの自動生成には、仕組み上どうしても越えられない限界があります。マニュアル作成の実務の視点から、5つに整理しました。
動画に記録されるのは、何をしたかという事実です。なぜそうしたのか、どんなときに別の選択をするのかは映りません。ベテランが無意識のうちに行っている確認や、経験にもとづく判断は、本人が声に出して説明しないかぎり文書になりません。
マニュアルの価値の多くは、この判断の基準にあります。聞き取りによって補うことが欠かせません。
撮影される動画は、たいてい、うまくいったときの1回分です。エラーが出た場合、条件が違う場合、繁忙期の場合といった分岐は、動画1本からは生成されません。
実務では、例外への対応こそが問い合わせの発生源です。ここが抜けたマニュアルは、現場で使われなくなっていきます。
対策として、失敗した場合の対応をあえて撮影しておく方法もあります。ただし、すべての例外を撮影するのは現実的ではありません。動画で押さえるのは基本の流れとし、例外は聞き取りで補うと割り切るほうが早く進むでしょう。
自動生成の単位は、動画1本につき作業1つです。業務全体をどう章立てし、どの細かさで分割し、どこに何を配置するかという構成の設計は、対象の動画を何本増やしても自動では生まれません。
マニュアルの出来は構成で決まると言われるほど、この工程は重要です。業務の全体像を見渡せる人による設計が必要になります。
話し言葉を文字にした文章は、同じ操作が、クリック、押下、選択と分かれるなど、表記のばらつきを含みがちです。1本であれば小さな問題です。しかし複数のマニュアルを束ねたとき、用語がそろっていないと、読み手の誤解や、検索しても見つからない状態を招きます。組織としての表記ルールにそろえる作業が、別途必要です。
業務の実際のデータを使って撮影した動画には、顧客名や個人情報が映り込みやすいものです。AIがそれを消すべき情報だと判断してくれるとは限りません。
対処としては、モザイクなどの加工、テスト環境やダミーデータでの再撮影、該当場面の削除のいずれかを行います。ダミーデータを使う場合は、あとから検索して見つけやすい仮名を選びましょう。フィンテックスでは、置き換える人名や企業名について、お客様と事前にすり合わせのうえ決定します。「フィン太郎」「フィンテックス商事」など、社名を含む造語にしておけば、検索でも目視でも仮名だとすぐわかります。個人データの取り扱いは個人情報保護法の対象となるため、社内規程と照らして判断してください。あわせて、動画をアップロードするサービス側のデータの取り扱いも確認が必要です。なお、本記事の記載は一般的な情報であり、法的助言ではありません。
こうした限界の影響は、業務が整理されないまま、撮っただけの動画で自動生成すると、いっそう大きく表れます。業務の分解と整理を先に行うと、AIによる生成の精度も上がります。
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自動生成された下書きを、使えるマニュアルに引き上げるための確認の観点を整理します。
| 観点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 正確性 | 手順の抜け、順序の誤り、画面と文の不一致がないか |
| 網羅性 | 前提条件、例外への対応、注意事項が補われているか |
| 構成 | 目次から目的の手順にたどり着けるか、説明の細かさがそろっているか |
| 表現 | 用語と表記が統一され、読み手の水準に合っているか |
| 安全性 | 機密情報や個人情報の映り込みが処理されているか |
確認は、業務を知っている人と、業務を知らない人の2つの目で行うのが理想です。
とくに効果が大きいのは、業務を知らない人による再現テストです。下書きのとおりに操作してもらい、迷わず完了できるかを試します。書いた人には当たり前に見える記述でも、初めて読む人には情報が足りないことが分かります。
誰がいつ、どの観点を確認したのかを記録しておきましょう。動画からの自動生成では、同じ業務のマニュアルを繰り返し作り直す場面が出てきます。前回どこを直したかが分かれば、次回は同じ箇所を重点的に見るだけで済みます。
確認の観点は、次の記事でさらに細かく20項目に整理しています。
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A:そのままの配布はおすすめできません。生成物はあくまで下書きです。判断基準や例外対応の補足、用語の統一、機密情報の確認といった人の確認を経てから配布するのが安全です。誤った手順が現場に定着してしまうと、文書を直すだけでは済みません。一度覚えた手順を覚え直してもらう手間のほうが、はるかに大きくなります。
A:手順が固定されており、画面や動作として目に見える定型的な業務が向いています。たとえば、システムの操作、データの入力、機器の基本操作などです。一方で、判断や交渉が中心の業務や、例外の分岐が多い業務は、動画だけでは要点が映りません。聞き取りを組み合わせた文書化が適しています。
A:モザイクなどの加工、テスト環境やダミーデータでの再撮影、該当する場面の削除のいずれかで対処します。あわせて、動画をアップロードするツール側の規約で、データの保存場所やAIの学習への利用の有無を確認しましょう。判断がつかない場合は、アップロードの前に情報システム部門へ相談することをおすすめします。
A:二者択一ではなく、用途による使い分けが現実的です。すでに動画マニュアルがある場合は、問い合わせの多い手順から文書化すると、少ない投資で効果を確かめられます。全編を一度に文書化する必要はありません。逆に文書だけがある場合は、新人がつまずきやすい工程だけを撮影して補う進め方もあります。
A:動画の用途によって変わります。作業手順を扱う動画なら、1本30秒から1分程度で、項目ごとに分けて作るのが効果的です。座学にあたる内容であれば、5分から15分程度でも構いません。
短いほうがよい理由は、動画マニュアルの使われ方にあります。動画を見ながら作業を進める場面は、実務では多くありません。動画で内容を覚えてから、実際の業務にあたるという使い方が中心です。5分の動画をすべて覚えて実践するのは難しいため、手順の動画は項目ごとに区切るほうが身につきます。
料理のレシピ動画と比べると分かりやすいでしょう。レシピ動画は、作りながら止めたり戻したりして使うものなので、長い尺が合っています。一方で業務の動画マニュアルは、そうした使い方をされにくいのが実情です。
自動生成の面でも、短い動画には利点があります。長い動画は場面の分割の精度が落ちやすく、確認する側の負担も大きくなります。工程ごとに分けて撮っておけば、あとから章立てを組み直す際にも扱いやすくなります。
フィンテックスは1987年の創業以来、500社以上のお客様のマニュアル作成を支援してきたマニュアル作成の専門会社です。
動画からの自動生成では、判断基準の聞き取りや構成の設計といった人の仕事が残ります。フィンテックスは、この部分を含むマニュアルづくりを2つのサービスで支援しています。AIを使うかどうかをお客様に選んでいただける2本立てです。
どちらを選ぶかは、お客様の情報の取り扱い方針と、優先したいことにもとづいて決めていただけます。たとえば、社内方針としてAIの利用を認められるか、納期と費用をどこまで抑えたいか、といった観点です。
なお、いずれの場合も、お客様の情報は秘密保持契約(NDA)と社内管理体制のもとで取り扱います。お客様のデータをAIの学習に利用することはありません。
動画素材をお持ちの場合も、撮ってあるが文書化が進まない、自動生成を試したが品質が不安、といった段階からのご相談が可能です。判断基準の聞き取りや構成の設計、表記の統一といった、AIが苦手な部分を引き受けます。
動画からのマニュアル自動生成は、画面録画型と動画解析型という2つの類型に整理できます。下書きを作る工数の削減には、確かな効果が期待できるでしょう。一方で、判断の基準、例外への対応、構成の設計、表記の統一、機密情報への配慮という5つの限界は、AIだけでは越えられません。
まずは手持ちの動画1本で試し、生成された下書きを本記事の観点で点検することから始めてみましょう。ツールの得意な部分と苦手な部分が、自社の業務に即して見えてくるはずです。カタログを比べるより、1本試すほうが判断は早くなります。
作ったマニュアルが現場で使われるかどうかは、また別の課題です。あわせて次の記事も参考になります。
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フィンテックスでは、「伴走型マニュアル作成代行」と「AI活用型マニュアル作成代行」の2本立てでご支援しています。動画資産の文書化や、自動生成ツールとの組み合わせにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
業務マニュアル
初任者用の教育アイテムとして業務マニュアルの整備を計画。徹底した現場取材・撮影を通じて情報を得るとともに、現場で本当に使えるマニュアルを作り上げました。以降、別業務にも展開してマニュアル整備プロジェクトを毎年継続しています。
操作マニュアル
新サービス立ち上げにともなうマニュアル作成。短期間ながら、ユーザーにやさしい解説とソフトバンクらしいビジュアルにこだわったマニュアルを完成させました。
監修者

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php
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