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生成AIの普及により、マニュアルの下書きは短時間で作れるようになりました。一方で、AIが書いた手順書をそのまま社内に配布してよいのか、と不安を感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。AIの出力には、もっともらしい誤りや自社ルールとのずれが混ざることがあります。
本記事では、1987年の創業以来マニュアル作成を専門としてきたフィンテックスが、AIで作ったマニュアルの品質を確認する20項目を紹介します。各項目には、起こりやすい問題と確認の方法をセットで記載しました。
目次
AIで作ったマニュアルに品質チェックが必要な理由
AIで作ったマニュアルの品質を確認する20項目の全体像
【分類1】事実性を確認する5項目
【分類2】業務適合性を確認する5項目
【分類3】読者適合性を確認する4項目
【分類4】表現・表記を確認する3項目
【分類5】安全・運用を確認する3項目
よくある質問(FAQ)
フィンテックスの品質チェック体制
まとめ
生成AIには、事実と異なる内容を正しいかのように出力する現象があります。ハルシネーションと呼ばれるものです。文章として自然であるほど誤りに気づきにくく、読んだ人が書かれている手順通りに行動するマニュアルでは、記載の誤りが機器やシステムの誤操作という結果につながります。
混入する頻度は、入力する資料の質や業務の内容によって変わります。そのため、何割が誤るといった数値を前提に運用を組むことはできません。AIは必ず間違えるという前提で、品質を人が担保する体制を整える必要があります。
AIは、入力された資料と一般的な知識をもとに文章を組み立てます。そのため、資料に書かれていない例外対応や、経験者が頭の中だけで行っている判断基準は、初稿から抜け落ちます。
やっかいなのは、抜けた部分をAIが一般論で自然に埋めてしまう点です。文章としては成立しているため、読んだだけではその欠落と自然な穴埋めに気づけません。
誤ったマニュアルによって作業ミスやトラブルが起きた場合、その責任はAIではなく、マニュアルを配布した企業と担当部門が負います。AIが作ったから、という説明は社外にも社内にも通用しません。だからこそ、公開する前に組織として確認する仕組みが必要になります。
人手不足を背景に、マニュアル作成へのAI活用は今後も広がっていくでしょう。経済産業省の調査では、システム開発や運用を担うIT人材が2030年には最大約79万人不足すると見込まれています。人手が限られていくのは、マニュアルを作る現場も同じです。
ここで注意したいのは、不足するのが作る人だけではない点です。生成した内容を確認できる人も、限られていくと考えられます。確認を担当者個人の注意力に任せていると、その人の負荷が上がり続け、やがて確認そのものが省かれます。だからこそ、何をどう確認するかをあらかじめリストにして、担当者が替わっても同じ水準を保てる状態にしておくことが大切です。
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20項目は、次の5つの分類で構成されています。
| 分類 | 項目番号 | 確認する内容 | 起こりやすい問題 |
|---|---|---|---|
| 1. 事実性 | 項目1〜5 | 手順・名称・数値・情報の新しさ・根拠 | 事実と異なる記述による誤操作 |
| 2. 業務適合性 | 項目6〜10 | 例外対応・判断基準・前提条件・目的 | 経験者しか知らない知識の欠落 |
| 3. 読者適合性 | 項目11〜14 | 用語の水準・説明の細かさ・探しやすさ | 読者と合わず、読まれないまま残る |
| 4. 表現・表記 | 項目15〜17 | 表記ゆれ・文体・あいまいな言葉 | 検索しても見つからず、信頼も損なう |
| 5. 安全・運用 | 項目18〜20 | 安全表示・機密情報・版と更新 | 労災・情報漏えい・情報の陳腐化 |
分類1と分類2は、文書の中身が正しいかどうかを見る観点です。分類3と分類4は、その中身が読者に届くかどうかを見ます。分類5は、配布した後に問題を起こさないための観点と言えるでしょう。
20項目のすべてを1人が毎回確認する必要はありません。業務のリスクに応じて濃淡を付けるほうが、無理なく続けられます。
安全・金銭・法令に関わるマニュアルは、20項目すべてを確認します。軽微な社内手順であれば、分類1と分類2を優先的に確認するだけでも、大きな誤りは防げるでしょう。
担当も分けるのが効果的です。事実性は業務担当者、業務適合性は管理者や経験者、読者適合性は実際の想定読者にあたる担当者が確認します。表現・表記は文書を取りまとめる担当者が、安全・運用は文書管理の担当者が確認すると、5つの分類すべての担当がそろいます。書いた人が1人で全項目を見るのは、見落としの原因になります。
食い違いが見つかった場合は、原本の記載を正として修正します。原本が複数あり、どちらが正しいか判断できないときは、修正せずに保留とし、業務所管の部署に確認しましょう。
根拠をたどれない記述は、要確認の印を付けて保留にし、根拠を確認できるまで公開しません。根拠が不明なまま配布すると、誤った情報の拡散につながります。
指摘された内容は、その場で聞き取り、補足として本文に書き加えます。この聞き取りは、マニュアルの精度を上げるだけでなく、経験者の知識を組織に残す工程でもあります。
AIで作ったマニュアルが現場で使われなくなる理由は、次の記事で詳しく書きました。
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フィンテックスでは、社内で独自に作成したマニュアルのデータベース(※)を用いて、さまざまな角度から分析を行っています。その分析結果は、マニュアルでの表記決定や校正作業に活用しています。
※データベースは当社独自の資産です。お客様からお預かりした資料や、納品したマニュアルなどは、情報保護の観点からデータベースには一切含めておりません。
生成AIを使う場合、章ごとに分けて生成すると表記がゆれる傾向があります。表記ゆれが混ざっている前提で確認するのが安全です。
一覧にした箇所は、具体的な条件・数値・期限に置き換えられないかをひとつずつ検討します。具体的な記載に置き換えられないものは、誰の判断で決めるのかを補うだけでも、読者の迷いが減ります。
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マニュアル校正の基本とは?見落としがちなポイントを徹底解説
見つかった実データは、仮の表記へ置き換えます。このとき大切なのは、あとから検索して見つけやすい仮名を選ぶことです。ありふれた名称を使うと、本文中の別の記述と紛れて探せなくなります。
フィンテックスでは、使用する仮の人名や企業名のルールについて、お客様に事前にご相談のうえ決定します。社名を含む造語にしておけば、検索でも目視でも仮名だとすぐわかります。仮名のルールは社内で共有しておきましょう。担当者ごとに違う仮名を使うと、置き換え漏れの確認ができなくなります。
なお、個人データの取り扱いは個人情報保護法の対象となるため、社内規程と照らして判断してください。本記事の記載は一般的な情報であり、法的助言ではありません。社内ルールの整備にあたっては、経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が公開しているサイバーセキュリティ経営ガイドラインも参考になります。
※参照:個人情報保護委員会「個人情報保護法」/経済産業省・IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」
安全・運用の観点で実際にどのようなトラブルが起きるかは、次の記事で5つのパターンに整理しています。
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AIで作ったマニュアルのリスク5パターン|事故を防ぐ回避策
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マニュアル更新によって得られるメリットとしないことのリスク
A:問題はありません。下書き作成の効率化には有効な手段です。大切なのは、AIの出力を完成品ではなく初稿として位置づけ、公開する前に人が確認する工程を運用に組み込むことです。確認の観点をあらかじめ決めておけば、生成の速さをそのまま活かせます。
A:業務や取り扱い操作のリスクに応じて濃淡を付けるのが現実的です。迷う場合は、誤りが人身・金銭・法令対応のいずれかに直結するかを目安にしてください。直結するなら20項目すべて、そうでなければ分類1と分類2を優先します。初回は全項目を通し、2回目以降の改訂では変更箇所に関わる分類だけに絞る方法も有効です。
A:役割を分けるのが理想ですが、人数が足りない場合は優先順位を付けます。まず、書いた本人以外が1人確認する体制だけは確保してください。読者役を用意できない場合は、その業務の未経験者に読んでもらうだけでも代わりになります。他部署の方に10分だけ協力を依頼する形でも、書き手が気づけない不備は見つかります。
A:業務内容や入力した資料の質によって大きく変わるため、一概には言えません。ゼロにはならないという前提で確認体制を設計することが大切です。頻度を下げる工夫としては、入力する資料を最新版にそろえること、根拠のない記述を出力しないようAIへ条件を指示することの2点が有効です。
A:残すことをおすすめします。誰がいつどの項目を確認したかを記録しておけば、次の改訂時に確認範囲を絞れるでしょう。トラブルが起きた際にも、どこまで確認していたかを説明できる状態になります。
フィンテックスは1987年の創業以来、500社以上のマニュアル作成を支援してきました。この経験をもとに、AIの出力のどこに誤りが出やすいかを踏まえた品質確認を、サービスとして提供しています。
マニュアル作成代行は、AIを使うかどうかをお客様に選んでいただける2本立てです。
どちらを選ぶかは、お客様の情報の取り扱い方針と、優先したい条件にもとづいて決めていただけます。たとえば、社内方針としてAIの利用を認められるか、納期と費用をどこまで抑えたいか、といった観点です。
AI活用の際には、フィンテックスが社内で体系化した知見を用います。幅広い業界・職種・業務のマニュアルを作成してきた経験をもとにしたものです。お客様の情報は秘密保持契約(NDA)と社内管理体制のもとで取り扱い、お客様のデータをAIの学習に利用することはありません。
AIで作ったマニュアルの品質は、事実性、業務適合性、読者適合性、表現・表記、安全・運用という5つの分類、20項目で確認できます。事実と異なる記述と、経験者しか知らない知識の欠落は、読んだだけでは気づけません。現場での検証と聞き取りを必ず挟みましょう。
確認を個人の注意力に頼らず、リストにして組織の仕組みに変えることが、AI活用を安心して広げるための近道です。まずは手元のマニュアルを1本選び、本記事の20項目で点検することから始めてみましょう。
マニュアル作成そのものの進め方から見直したい場合は、次の記事も参考になります。
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AIでマニュアルを作成する方法|6ステップとプロンプト例【2026年版】
フィンテックスでは、マニュアル作成代行に加えて、お手持ちのマニュアルの品質を客観的に確認する支援も行っています。AIで作ったマニュアルの品質に不安がある方は、お気軽にご相談ください。
マニュアルコンサルティング
「自社内でマニュアルが作れるようになりたい」というご要望に応え、制作ガイドラインやフォーマットの整備、またWordにおける操作方法のレクチャー会など、様々な上流工程の作業をお手伝いしました。モノづくりではなく企画検討が中心のお仕事でしたが、弾力的なスケジュール対応も含めて大きな評価をいただきました。
操作マニュアル
大型機械の操作やメンテナンスについて、機械のテクニカルイラストを用いながら分かりやすく間違いのない記載で、操作担当者がスムースに作業できるようなマニュアル作成を行いました。
監修者

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php
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