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「はい」という言葉を、あなたはいくつの意味で使っているでしょうか。
多くの方は「肯定の返事」と答えるかもしれません。けれども日本語の「はい」には、少なくとも7つの意味があります。
今回は、フィンテックスが2026年10月に出版した書籍『「はい」が7つの意味を持つ国 日本語の深みを知ればマニュアルはもっと伝わる』について、その中身と、この本に込めた考えをご紹介します。
本書の書名は、第1章で投げかけている問いから生まれました。
「明日、来られますか」「はい、行けます」。もっとも一般的な「はい」は、この肯定の返事です。けれども私たちは、話を聞きながら「はい、はい」と打つ相槌にも、名前を呼ばれたときの応答にも、同じ「はい」を使っています。
「はい、では次の方どうぞ」と促す「はい」。
「はい、それは初耳です」と驚く「はい」。
「はい、わかりました」と引き受ける「はい」。
そして極めつけは、「もう一杯いかがですか」「はい、結構です」。この「はい」は、断りの返事です。
たった一音に、少なくとも7つの意味が託されているのです。
それでも私たちは、相手の表情や声のトーン、前後の文脈から、どの「はい」なのかを瞬時に聞き分けています。
ところが、文書になると話は変わります。
たとえば、マニュアルに「申請内容に間違いがありませんか。はい、を選択した場合は次の画面に進みます」と記載されているとします。この「はい」は画面上のボタン名なのか、肯定の返事なのか。読み手は、一瞬迷ってしまいます。
では、7つの「はい」は文書の中で、それぞれどのように誤読されてしまうのか。その答えは、本書の第1章で解き明かしています。
「はい」だけではありません。もう1つ、こんな一文を見てみましょう。
「ボタンを押します。」
日常の感覚では、何の問題もない文です。しかしマニュアルでは、この一文が混乱のもとになります。押すのはユーザーなのか、管理者なのか。それともシステムが自動で処理するのか。日本語は、主語がなくても文が成り立つ言語だからです。
「ちょっと難しいかもしれません」という表現も同じです。会話では事実上「できません」の意味で通じます。けれども、この「察してください」が通じるのは、話し手と読み手が同じ文脈を共有しているときだけです。
フィンテックスがマニュアル制作の現場で検証を重ねてたどり着いた結論があります。
マニュアルが「伝わらない」原因の大半は、日本語そのものの構造にある。
丁寧に書いたつもりなのに伝わらない。その原因は、書き手の能力不足ではありません。日常会話で通じる省略を、そのまま文書に持ち込んでしまうことにあります。
原因が言語の仕組みにあるとわかれば、自分を責める必要はありません。仕組みを知れば、直し方も見えてきます。
関連記事:
マニュアルが伝わらない原因は日本語にあり|3つの落とし穴を解説
本書は、フィンテックスの2人による共著です。2人とも長くマニュアル制作に携わってきましたが、日本語と向き合うことになった入り口はそれぞれ違いました。
取締役の森田の入り口は、翻訳の世界でした。日本語と英語のあいだを毎日行き来するうちに、ある事実に気づきます。日本語を英語に訳す日本人は数多くいるのに、英語を日本語に訳す外国人は、ほとんど見かけなかったのです。
外側から眺めると、日本語はそれほど多彩で、繊細で、複雑な言語です。母語として何気なく使っている私たちには見えにくい難しさが、翻訳の現場には毎日ありました。
営業本部長の中丸(当メディアの監修者)の入り口は、営業でした。お客様の現場でヒアリングをしていたとき、新人スタッフが上司にこう尋ねたのです。
「これは、私がやるんですか、それとも上司がやるんですか」
上司は「当然部下がやる」と思い込み、その思い込みを口にしていませんでした。
わからないのは相手のせいではなく、説明する側の問題だ。そう気づいてから、「説明する」ことへの見方が変わりました。
入り口は違っても、2人が向き合っていたのは日本語そのものの不思議さでした。
今回出版した『「はい」が7つの意味を持つ国』は、全8章と付録で構成しています。
前作『マニュアルが会社を救う 属人化からの解放』の姉妹編にあたります。
前半では、日本語の特徴を1つずつ取り上げます。主語の省略、察する文化、音とオノマトペ、文字の歴史、敬語や助詞の仕組み、和語・漢語・外来語の三層。それぞれの不思議を味わいながら、マニュアル作成の現場でぶつかる日本語の壁を紹介しています。
虫の声を「言葉」として聴く感性。3種類の文字を同時に使う表記。30以上もある一人称。ふだん意識しない日本語の特徴が、実はマニュアルの読みやすさと深く関わっていることが見えてきます。
後半は実践編です。「誰が・何を・どうする」を記載する技術、表記をそろえる意味、操作マニュアルと業務マニュアルの違い。
話はさらに、日本語のあいまいさを弱点ではなく武器に変える方法や、AI時代の日本語マニュアルの考え方へと広げていきます。
巻末には、本書の知見を実務でそのまま使えるツールとしてまとめました。
「10の視点」は、フィンテックスが500社以上の制作実績から体系化した、マニュアルを点検するための評価フレームです。
本書はマニュアル制作者の視点で執筆していますが、対象はマニュアルに限りません。メール、報告書、企画書、議事録、チャットのメッセージ。日本語で何かを伝えるすべての場面で役立つ内容です。
本書を読み終えたとき、起こる変化は3つあります。
部下への指示がうまく伝わらないと感じている方。新人向けのマニュアル作成を任された方。文章を書くたびに「これで伝わるだろうか」と不安になる方。そうした方にこそ、手に取っていただきたい一冊です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 「はい」が7つの意味を持つ国 日本語の深みを知ればマニュアルはもっと伝わる |
| 著者 | 森田 尚子・中丸 貴仁(株式会社フィンテックス) |
| 発売日 | 2026年10月6日 |
| 価格 | 1,540円(税込) |
| ページ数 | 272ページ |
| 判型 | ペーパーバック |
| ISBN-13 | 979-8177807188 |
書籍はAmazonでご購入いただけます。
何気なく使ってきた「はい」の奥に、日本語の奥行きと、伝わる文章のヒントが詰まっています。
日本語の不思議をめぐる旅に、ぜひご一緒ください。
監修者

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
著書:マニュアルが会社を救う: 属人化からの解放
著書:「はい」が7つの意味を持つ国
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php
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