マニュアルアカデミー
ビジネスを展開する上で、費用面の負担はつきものです。そんなときに活用できるのが「補助金」「助成金」「給付金」といった公的な支援制度です。これらは似たような印象を持たれがちですが、制度の目的や申請条件、もらえるタイミングなどには明確な違いがあります。
この記事では、それぞれの制度について基本的な違いを整理しながら、活用することのメリット、申請時に押さえておきたいポイントについて解説します。
目次
補助金・助成金・給付金とは?それぞれの基本と違いを整理
補助金・助成金を活用するメリットとは?
補助金が活用できるマニュアル整備とは
補助金申請のポイント
まとめ
補助金は、国や自治体の政策に沿った事業に対して支給される公的資金です。主に事業者が対象で、事前の申請と審査を経て「採択」されると受給できます。
たとえば「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」などがあり、設備投資や業務改善に活用されています。事前申請が必要なケースが多く、事前に支払った費用が対象となるため、資金繰りの計画も必要です。
助成金は、雇用環境の改善や人材育成などを目的とした支援制度で、主に事業者が対象です。補助金と違い、一定の条件を満たしていれば受給でき、審査による競争はありません。
「キャリアアップ助成金」や「雇用調整助成金」などが代表的で、企業の労働環境の改善や人材育成などに活用されます。補助金と同じく事前申請が必要なケースが多いため、制度内容の把握と資金繰りの計画が必要です。
給付金は、災害や緊急時に、個人や事業者を対象に支給される支援金です。「特別定額給付金」や「持続化給付金」などがあり、申請手続きが比較的簡単で、要件を満たせば原則受け取ることができます。一律で支給されるケースが多く、緊急性を重視した制度です。多くは期間限定の実施であるため、最新情報のチェックが重要です。
このように、それぞれの制度には特徴的な違いがあります。以下の表で、ポイントをまとめて確認してみましょう。
補助金・助成金・給付金の違い【比較表】
項目 | 補助金 | 助成金 | 給付金 |
目的 | 国や自治体の政策推進 | 雇用環境の整備、人材育成など | 災害・緊急時の生活・事業支援 |
対象者 | 主に事業者 | 主に事業者(特に雇用関連) | 個人・事業者 |
申請の難易度 | やや高い(審査・競争あり) | 条件を満たせば原則受給可能(審査なし) | 申請手続きが比較的簡易 |
受給のタイミング | 事業実施後に実績報告して受給(後払い) | 対象行動後に申請し受給(後払い) | 対象者に一律支給されることが多い |
審査の有無 | あり(採択制) | 基本なし(支給要件に合致しているかの確認あり) | 原則なし(収入などの確認がある場合も) |
補助金や助成金は「資金支援が受けられる制度」として知られていますが、その効果は金銭的な面にとどまりません。導入コストの軽減をはじめ、企業の信頼性向上や業務改善のきっかけにもなるなど、幅広いメリットがあります。ここでは、制度をうまく活用することで得られる主な利点をご紹介します。
業務改善や新しい取り組みを行いたいと思っても、コストの壁に阻まれて進められないことがあります。そんなとき、補助金や助成金を活用することで、初期費用の一部を公的資金でまかなうことが可能になります。
補助金は、国や自治体による厳正な審査を経て採択されるため、「公的に評価された事業」として信頼性が向上します。これは対外的な信用力にも良い影響を与えます。
補助金や助成金の申請には、現状の課題整理や事業計画の策定が求められます。その過程で業務の見直しが進み、結果的に業務改善のきっかけになることも少なくありません。
制度をうまく使うことで、単なる資金調達を超えた経営改善や組織強化へと繋がります。業務マニュアルや運用体制の整備とあわせて、検討してみてはいかがでしょうか。
業務の標準化や効率化を目的として、補助金を活用してマニュアルを整備する企業が増えています。特に中小企業では社内リソースが限られていることもあり、外部サービスを活用して体系的なマニュアルを作成する動きが活発です。
この章では、補助金を使ってマニュアル整備が可能なケースや、その整備が企業にもたらす価値について解説します。
たとえば「IT導入補助金」では、オンラインマニュアル作成ツールや、動画マニュアルの作成ツールの導入費用が対象になることがあります。
補助対象として認められるかどうかは、制度ごとの要件や申請年度によって異なります。公募要領を確認して、自社が導入を検討しているツールが対象になっていないかをチェックしましょう。
マニュアル整備をすることによって、補助金審査で有利になる場合もあります。
たとえば、災害やシステム障害、感染症の大規模な流行などの有事において対応をマニュアル化しておく場合などです。こうした事前対策を、「事業継続力強化計画」として中小企業庁に申請し認定されると、補助金審査での加点措置が受けられることがあります。
マニュアル整備は、日常の業務効率化や事業の見直しにつながるだけでなく、非常時においても安定した事業運営を実現する土台となります。マニュアルを整備・運用することが企業の中・長期的成長への投資になるといえるでしょう。
補助金の申請には多くの準備や手続きが必要なため、「いつまでに」「何が」必要なのかを確認することが重要です。
以下の3つのポイントを押さえておくと、申請から採択、実行までをよりスムーズに進めることができます。
制度ごとに対象者や対象経費、実施要件が細かく定められています。申請前にガイドラインや公募要項にしっかりと目を通し、自社が該当するか確認するとともに、必要な申請書類を漏れなく準備できるようにしましょう。
必要書類や手続きについて、あらかじめチェックリスト化しておくのもおすすめです。
申請から採択、事業実施、報告書提出までにはそれぞれ期限が設けられています。社内の作業スケジュールと照らし合わせ、余裕を持った計画が必要です。
準備や手続きの流れ、役割分担を業務フロー化して管理・共有することもおすすめです。
申請書には、補助金を使って何を行い、どのような効果が期待されるかを記載する必要があります。目的や成果を具体的に整理し、説得力のある計画を立てましょう。
有効な申請書の作成には一定のスキルが必要になるため、外部の専門家(行政書士、申請代行会社)に委託することも検討しましょう。
補助金・助成金・給付金は、それぞれ制度の目的や申請の流れ、受給条件に違いがあります。
これらの制度を正しく理解し、自社の状況に合った制度を選ぶことで、資金面の負担を軽減できるだけでなく、業務改善や体制の見直しなど、中長期的な企業成長にも繋がります。 補助金や助成金を単なる資金調達手段としてではなく、業務の効率化や組織力の強化といった視点で捉えて、計画的に活用していきましょう。
監修者
企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php