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HACCP(ハサップ)とは?基本情報と導入の手順やメリットを解説

食品業界では、製造過程の安全管理が非常に重要視されています。その中で注目されているのが、HACCP(ハサップ)という衛生管理手法です。HACCPは食品の安全性を高めるための国際的な管理システムで、多くの食品等事業者が導入を進めています。

本記事では、HACCPの基本情報や導入手順、さらにそのメリットについてわかりやすく解説します。HACCP導入を支援するマニュアルの重要性についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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目次
HACCPとは?基本情報をわかりやすく解説
HACCPの7原則・12手順で進める実践プロセス
HACCP導入のメリットと注意点
HACCP導入を支援するマニュアルの重要性
まとめ

HACCPとは?基本情報をわかりやすく解説

HACCPは、食品の安全性を科学的に管理するためのシステムです。この章では、HACCPの定義と目的、その特徴や従来の食品衛生管理手法との違いについて解説します。

HACCPの定義と目的

HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略称で、「危害要因分析(Hazard Analysis)」と「重要管理点(Critical Control Point)」の二つで構成されています。

対象となる食品等事業者が、食品原料の入荷、加工、製品の出荷までのあらゆる工程においての危害要因を分析し、その中でもとくに重要な工程を監視・記録することで、危害要因を排除・低減する衛生管理手法です。

国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会から発表・推奨されている国際基準で、世界中で導入が進んでいます。

HACCPは、危害要因の分析と重要な工程の継続的な管理によって食品の安全性を高め、消費者の健康を守ることを目的としています。

HACCPの特徴

HACCPの大きな特徴は、製造工程全体のリスクを管理するだけではなく、その中でもとくに重要な工程を、継続的に記録・監視する点にあります。

まず、製造工程全体からさまざまな危害要因を分析し、リスクが可能な限り低減するような管理方法を明確にします(HA: Hazard Analysis)。たとえば、以下のような危害要因が挙げられます。

  • 生物的要因(病原細菌やウイルスなど)
  • 化学的要因(カビ毒や重金属など)
  • 物理的要因(毛髪やプラスチック片などの異物混入)

さらに、危害要因を除去、あるいは許容範囲まで低下させる最も重要な工程を、重要管理点(CCP: Critical Control Point)とします。CCPでは、HAに基づいて温度や時間を管理するだけではなく、継続的に記録・監視を行います。

従来の食品衛生管理手法との違い

従来の食品衛生管理手法では、最終製品からランダムにサンプル製品を抽出し検査する手法が主流でした。検査にかかる時間が削減できる反面、製品すべての品質が保証されるわけではないという欠点がありました。

一方HACCPでは、分析の結果として重要な工程を継続的に記録・監視するので、原因の特定や改善を迅速に行うことができます。より効率的に製品の安全性を高める手法として、多くの企業が導入を進めています。

HACCPの7原則・12手順で進める実践プロセス

ここからは、HACCPの基本的な理念である7原則と、それを基にした12手順で進める実践プロセスについて詳しく説明します。

HACCPの7原則とは?

HACCPの7原則は、食品の安全性を確保するための基本的な考え方を示しています。これらの原則に基づいて、製造工程を管理し、リスクを未然に防ぐ仕組みを構築します。

  1. 危害要因の分析(Hazard Analysis)
    製造工程における潜在的な危害要因(生物的、化学的、物理的)を特定し、それらのリスクレベルを分析します。
  2. 重要管理点(CCP: Critical Control Point)の決定
    危害要因を防止、除去、または許容可能な水準に低減するための重要な管理箇所を決定します。
  3. 管理基準(CL: Critical Limits)の設定
    CCPで危害を防ぐための基準値を、科学的根拠に基づいて設定します。これには、温度、時間、pH値などの具体的な数値が含まれます。
  4. CCPのモニタリング方法の設定
    CLが守られているかどうか、継続的に監視する担当者や対象を決定します。
  5. 改善措置の設定
    CLを逸脱した場合に取るべき具体的な対応策を、事前に計画します。
  6. 検証の実施
    HACCPシステム全体が適切に機能しているかを定期的に検証します。これには、モニタリングの記録や監査が含まれます。
  7. 記録と文書管理
    HACCPの運用状況を記録し、文書として管理します。これにより、トレーサビリティを確保し、問題発生時の迅速な対応が可能となります。

これら7原則を基に、HACCPシステムを構築し、運用を進めていきます。

HACCPの12手順で進める実践プロセス

HACCP導入の具体的なプロセスは、HACCPの7原則と導入準備段階を統合した12手順にまとめられています。これにより、HACCPシステムを体系的に進めることが可能です。

  1. HACCPチームの編成(準備手順1)
    製造、品質、衛生などの担当者を中心に、HACCPの運用を担うチームを編成します。必要に応じて外部の専門家を加えることもあります。
  2. 製品説明書の作成(準備手順2)
    製品の原材料、梱包資材や保存方法、輸送方法などを詳細に記録し、危害要因分析の基礎情報とします。
  3. 意図する用途の確認(準備手順3)
    製品がどのように使用されるか(家庭用、業務用など)を確認し、想定されるリスク(加熱処理の要不要、アレルギーなど)を把握します。
  4. 工程フロー図の作成(準備手順4)
    原料の受け入れから出荷までの全工程をフローチャート化し、工程ごとの流れを可視化します。
  5. 工程フロー図の現場確認(準備手順5)
    作成した工程フロー図が現場の実態と一致しているか確認し、必要に応じて修正します。
  6. 危害要因の分析(原則1)
    各工程で生物的・化学的・物理的危害を洗い出し、リスクのレベルに応じて対応の優先順位をつけます。
  7. 重要管理点(CCP)の決定(原則2)
    危害要因を制御する上で、とくに重要な工程を重要管理点(CCP)として選定します。機器のメンテナンスや洗浄作業など、一般的な衛生管理プログラムで管理できる危害要因はCCPとはしないのがポイントです。
  8. 管理基準(CL)の設定(原則3)
    各CCPにおいて守るべき温度や時間などの具体的な管理基準(CL)を設定します。
  9. モニタリング方法の設定(原則4)
    CLが守られているかを確認する担当者や方法、対象を決め、異常の早期発見を可能にします。
  10. 改善措置の設定(原則5)
    CL逸脱時の対応手順を事前に定め、不適合製品の流通を防ぎます。
  11. 検証の実施(原則6)
    HACCPシステムが適切に機能しているかを確認するため、定期的な検証を行います。場合によっては、CCP工程の設定条件などを見直すことも含みます。
  12. 記録と文書管理の実施(原則7)
    モニタリング結果や是正措置などを記録・保存し、トレーサビリティを確保します。

これら12の手順を実施することで、HACCPシステムを組織内に確実に定着させることができます。食品の安全性を高めるだけでなく、顧客や取引先からの信頼にもつながるため、継続的な運用と見直しが重要です。

HACCP導入のメリットと注意点

HACCPを導入することで、食品等事業者にとって多くの利点があります。しかし、導入時にはいくつかの課題も存在するため、それらを理解し適切に対応することが重要です。

食品安全の向上と企業の信頼性確保

HACCPを導入することで、危害要因を事前に特定し適切に管理できるようになります。これによって食品事故の発生リスクを低減できます。

さらに、HACCPを導入している企業は、食品安全に対する高い意識を持っていると評価されるため、消費者のイメージアップや取引先との信頼関係構築につながります。

また、国際的な食品安全基準に準拠しているため、海外市場への進出を目指す企業にとっても大きなメリットとなります。

直面しやすい課題とその解決策

HACCP導入には、初期コストや従業員教育、運用体制の整備など、いくつかの課題があります。とくに従業員一人ひとりがHACCPの概念を正しく理解し、実践できるようになるには時間がかかる場合があります。

これらの課題を克服するためには、段階的に計画を進めることが重要です。たとえば、専門家の支援を受けたり、マニュアルを整備して現場での運用を円滑にしたりすることが効果的です。

HACCP導入を支援するマニュアルの重要性

HACCPを正しく導入し、運用を成功させるためには、現場に即したマニュアルの整備が欠かせません。この章では、HACCP導入におけるマニュアルの役割と、マニュアル制作会社を活用するメリットについて解説します。

HACCP運用に不可欠なマニュアルとは?

HACCPの運用には、以下のようなマニュアルが必要です。

  • HACCPシステムの概要マニュアル
    HACCPの基本的な考え方や原則、手順をわかりやすく説明したマニュアルです。従業員の理解を深めるための基礎資料となります。
  • 工程別の管理手順マニュアル
    各工程での危害要因、CCPやCLを具体的に記載したマニュアルです。現場での運用を円滑に進めるための実務的な指針となります。
  • 記録および対応マニュアル
    CCPのモニタリング記録方法や是正措置の手順を具体的に説明したマニュアルです。トレーサビリティを確保し、問題発生時の迅速な対応が可能となります。

これらのマニュアルを整備することで、HACCPシステムが現場で適切に運用される下地が整います。

参照:HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(厚生労働省サイトより)

マニュアル制作会社を活用するメリット

HACCP導入時にマニュアル制作会社を活用することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 理解しやすいマニュアルの作成
    構成やデザインを整理し、誰でも理解しやすいマニュアルを作成することができます。新人教育や社内研修用の教育ツールとして活用すれば、HACCPの重要性を理解しやすくなります。
  • 現場に合ったカスタマイズ
    製品や製造工程の特性に応じて、オーダーメイドのマニュアルを作成できます。これにより、現場の実情に即した運用が可能となります。
  • 導入から運用までの総合的なサポート
    HACCP導入を意識したマニュアルの企画・設計から、作成後のマニュアル更新・メンテナンスまで、総合的な支援を受けることができます。

マニュアル制作会社に依頼することで、担当者の負担軽減になり、通常業務に支障が出ることを防ぐ効果も期待できます。

まとめ

HACCPは、食品の安全性を確保するための国際的な衛生管理手法です。HACCPを導入することで、食品事故のリスクを低減し、企業の信頼性や市場競争力を高めることができます。

HACCPを効果的に導入するには、準備段階から運用、改善までを体系的に進めることが重要です。その際、現場で活用できるマニュアルの整備は欠かせません。マニュアルはHACCPシステムの基盤となり、従業員の理解やトレーサビリティの確保を支える重要な役割を果たします。

フィンテックスでは、さまざまな業界の業務マニュアル作成を行っています。マニュアルの整備にお困りの方は、ぜひ当社にご相談ください。

監修者

監修者の写真

中丸 貴仁

企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)

<略歴>

フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。 金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。 趣味は茶道。
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php

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