マニュアルアカデミー
カーボンニュートラルやサステナビリティといった言葉が注目される中で、「GX(グリーントランスフォーメーション)」という考え方も広がりを見せています。企業活動においても、環境への配慮と経済成長を両立させることが求められるようになってきました。
この記事では、GXの基本的な意味や背景、企業が取り組むメリット、そして社内でのGX推進方法について、わかりやすく解説していきます。今後のビジネス環境において重要なキーワードとなるGXについて、ぜひ理解を深めてみてください。
目次
GX(グリーントランスフォーメーション)とは
GXが求められる背景
企業がGXに取り組むべき理由
GX推進に必要な社内整備と業務の可視化
まとめ
まずは、GXとは何を意味するのか、そしてその背景にある社会的な潮流についてご紹介します。SDGsや脱炭素社会との関連性を踏まえながら、日本政府の動向もあわせて理解していきましょう。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、「化石燃料から環境負荷の少ないエネルギーへ転換するために社会制度や意識を変革し、さらには経済成長を目指す取り組み」を指します。
従来の化石燃料は、私たちの生活の維持・発展を支える重要なエネルギーですが、排出される二酸化炭素の量が問題となっています。GXでは、化石燃料から再生可能なクリーンエネルギーへ移行することで環境負荷を減らすことを目標としています。
そのためには、単なる環境対策ではなく、既存の産業構造や社会システムそのものを見直しながら、新しい価値を創造していかなくてはなりません。そのプロセスこそが、GXの本質といえます。
GXは、国連が提唱する「SDGs(持続可能な開発目標)」と密接に関係しています。特に、目標7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)や目標13(気候変動に具体的な対策を)といった項目がGXの主軸と重なっています。
また、日本を含む多くの国が「脱炭素社会」の実現を掲げており、2050年カーボンニュートラルという長期目標に向けて政策も進められています。カーボンニュートラルは、二酸化炭素の排出量と吸収・除去の割合をゼロにすることを目標としているため、GXの方針のひとつといえます。
日本政府もGXの推進に積極的です。2020年には「2050年カーボンニュートラル宣言」が出され、脱炭素に向けた政策の柱としてGXの実現が明確に打ち出されました。再生可能エネルギーでの電力供給を目指し、産業や家庭から排出される二酸化炭素を減らすために、さまざまな取り組みが行われています。
企業向けの政策としては、炭素排出に価格をつける仕組みの導入や(カーボンプライシング)、新たな国債として「GX経済移行債」を発行しての先行投資支援が打ち出されています。
政府は技術革新だけでなく、制度面や金融支援を含めた包括的な支援体制を構築しようとしています。企業がGXに取り組む上で、こうした国の方向性を把握しておくことは重要です。
GXが注目されるのは一時的なブームではなく、世界的な社会課題やビジネス環境の変化が背景にあります。この章では、気候変動の深刻化や国際的な潮流、そして企業経営との関連性についてご紹介します。
地球温暖化による異常気象、海面上昇、生態系の破壊など、気候変動の影響は年々深刻化しています。こうした状況に対し、各国が温室効果ガスの排出削減に本腰を入れはじめています。
気候変動は国家間の問題だけでなく、一人ひとりの日常や企業活動にも大きな影響を及ぼす課題です。洪水や猛暑による災害リスクの増加は、事業継続にも直接関係してくるため、企業が主体的に環境対策に取り組む必要があります。
GXは、こうした地球規模の課題に対して、持続可能なビジネスモデルを築くための重要なアプローチといえるでしょう。
世界各国で「脱炭素」を掲げた政策や取り組みが加速しています。たとえば、EUでは「欧州グリーンディール」が進められており、アメリカや中国でも再生可能エネルギーへの投資が拡大しています。
国際的な枠組みである「パリ協定」も、各国の脱炭素目標を設定し、進捗を共有する仕組みを強化しました。グローバル社会において「脱炭素」は、企業が無視できないキーワードになってきています。競争力の維持や市場での信用を得るために、GXを自社戦略に取り入れる企業は増えていくとみられます。
近年注目されている「ESG経営」(環境・社会・ガバナンスに配慮した経営)は、GXと非常に親和性が高い概念です。
ESGの「E(環境)」においては、再生可能エネルギーの活用や、省エネ設備の導入、廃棄物の削減など、GXの施策がそのまま評価対象になります。ESG投資を行う金融機関や投資家にとっても、GXの取り組み状況は重要な判断材料となっており、資金調達や上場企業の価値評価にも影響します。
GXは、企業にとって「環境配慮」の枠を超えた経営戦略のひとつです。気候変動や国際的な脱炭素の流れに対応するだけでなく、さまざまな面で企業の価値や競争力を高めるチャンスでもあります。ここでは、企業がGXに取り組む具体的なメリットをご紹介します。
環境への取り組みは、企業イメージに直結します。GXを推進することで、次のような効果が期待されます。
特に環境意識の高い市場では、GXに前向きな姿勢が、新たなビジネスチャンスの獲得にもつながります。
GXは、コスト削減にも効果があります。環境対策というと投資が必要なイメージを持たれがちですが、中長期的には経営効率の改善につながる取り組みです。
GXは「環境対策」と「経営改善」を同時に進められるアプローチといえます。
サステナビリティへの関心が高まる中、企業の環境方針は信頼の判断基準のひとつになっています。GXの取り組みは、以下のような評価につながります。
外部との関係性強化やリスク対応力向上の面でも、GXに向き合う姿勢は企業の信頼性を高める要素になります。
GXは、自社だけでなくサプライチェーン全体の視点でも重要です。特に取引先の要請や国際基準への対応を求められるケースが増えてきています。
カーボンニュートラルやESG投資といった世界的な潮流と向き合いながら、GXを経営の一部として取り入れることが重要です。
GXを実行するには、単に方針を掲げるだけでは不十分です。全社員がGXについて等しく情報・知識を持ち、日頃の業務を遂行できるよう、社員教育を通じて社内を整備していく必要があります。ここでは、社員教育や情報共有を通じて実践する、社内のGX推進策についてご紹介します。
GXを全社的に定着させるには、継続的な教育と情報共有が欠かせません。そのための仕組みとして、次の3つが重要です。
項目 | 目的 | 活用例 |
---|---|---|
社内教育・情報共有 | GXリテラシー向上と方針浸透 | 新入社員研修、社内報、定期研修、イントラ資料など |
業務マニュアル | 業務手順の標準化、誰でも対応できる体制づくり | エネルギー使用量の記録方法、データ報告手順など |
業務フロー図 | 部署間の連携強化、抜け漏れ防止 | 廃棄物処理の流れ、再エネ導入の承認プロセスなど |
社員への意識付けをするには、業務マニュアルを用いた社員研修が有効です。また、GXに関する業務は多くの場合、新たな視点や対応が求められるため、明確な手順がないと混乱や属人化を招きます。業務マニュアルを整備することで、次のような効果が得られます。
マニュアルを活用すれば、一人ひとりの行動をGX方針と連動させることができます。
GXに関連する業務は、複数の部署にまたがることが多く、関係者間の連携が重要になります。業務フローの可視化によって、以下のようなメリットが生まれます。
整備されたフロー図があれば、CO2排出の算定や再生可能エネルギー導入において、各部署での実務遂行がスムーズです。
GX(グリーントランスフォーメーション)は、企業が持続的に成長していくために欠かせない取り組みです。環境対策としての側面だけでなく、経営効率の向上、ブランド価値の強化、サプライチェーンとの信頼関係構築といった、さまざまな効果が期待できます。
社会的な潮流に注目しながら、自社で取り組むべき施策を検討してみてはいかがでしょうか。
フィンテックスでは各種業務マニュアルの作成を行っているので、ぜひご相談ください。
監修者
企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。
金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。
趣味は茶道。
月刊エコノミスト・ビジネスクロニクルで取材していただきました。ぜひご覧ください。
https://business-chronicle.com/person/fintecs.php