マニュアルアカデミー
経理の業務はやらなければならないことが多いことに加え、複雑な業務も含まれます。そのため「毎日忙しくて疲れる」「細かい部分の確認をする時間がないためにミスが発生してしまった」と悩む方もいるでしょう。
こういった状況を改善するためには、業務改善が欠かせません。
そこで、経理の業務改善に取り組みたいと考えている方のため、課題や業務改善による恩恵などを解説します。
この記事を読むことで、具体的な業務改善の方法や実施していくためのステップなどもわかるようになるので、ぜひご覧ください。
目次
経理とは
経理業務特有の課題
経理業務を改善することによってもたらされる恩恵
経理において業務改善を行う方法
経理業務を改善する際のステップ
経理における業務改善のポイント
経理の業務改善は企業の利益向上にもつながる
そもそも経理とは、企業においてお金や取引の流れ全般を記録したり、管理したりする業務のことをいいます。主な業務は、出納、起票、記帳、集計の4つです。
毎日行わなければならないものと月単位で行うもの、年単位で行うものがあります。
毎日行う業務といえば、現金の出納管理や伝票の整理、立替経費の精算などです。売り上げの集計も毎日行わなければなりません。
月単位で行うものとしては、社会保険料の納付や取引先への支払い、請求、回収などのほか、給与計算・支払いなどがあります。
また、年単位で行う業務としては、決算関連の作業や賞与の計算、年末調整、各種税金関係の納付があります。
業務の幅は非常に広く、会社経営に関する資金を取り扱うことから重要度の高い仕事です。
経理業務には、他の業務にはないような課題があります。代表的な課題は以下の5つです。
さまざまな業務でデジタル化が進められてはいますが、経理業務ではまだ紙媒体を取り扱うことがあります。例えば、領収書や請求書、発注書など企業間でのやり取りでは紙媒体が残っている企業もあるでしょう。
パソコンで作業するのとは異なりアナログで作業しなければならないため、なかなか効率化につながらず、悩んでいる方も多いようです。
紙媒体は手作業で処理しなければならないことに加え、頻繁な整理整頓や必要な書類の検索にも時間を取られてしまいます。
取り扱う枚数が多ければ、印刷にかかるコストも増えるため、この点を課題と感じている企業も多いようです。
データでのやりとりであれば、面倒な手作業での管理作業もなければ収納するためのスペースも必要ありません。ペーパーレス化が強く求められます。
業務が複雑で作業量が多いのであれば、それだけ経理業務を担当する人員を増やす必要があります。ですが、経理業務には十分な人員を充てられず、限られた人員でなんとか業務を取りまわしている企業も少なくありません。
これは、経理の業務が直接的に利益を生むわけではないこともあり、人員を回す優先度が下がってしまうためです。
また、専門的な知識が必要となる業務であることも大きな理由といえます。
経理業務の担当者が少なければ、それだけ一人当たりの業務量が多くなってしまうのは避けられません。これにより、オーバーワークの課題を抱えている企業も多いようです。
特に月末や月初め、1年の中でいうと年末調整の時期は毎日残業するのが当たり前になっている企業もあります。オーバーワークは離職にもつながるため、早期に見直さなければならないポイントです。
経理は、業務の中で企業の金銭を扱うことになり、非常に責任のある仕事です。また、決算のための資料を作成することもあるため、企業にとって欠かせない存在です。
重要な情報を取り扱うこともあるので、心理的な負担が大きくなってしまうこともあります。
特にお金の問題はミスが許されません。かといって経理担当者が不足している職場では、一つひとつの作業に時間をかけるなど丁寧に行うことも難しくなります。
作業が遅延すると経営判断の遅れにつながることもあるため、このあたりも心理的負担を増やしている要因です。心理的な負担から従業員が離職してしまった場合はさらに人手不足に陥ってしまいます。
経理が担当する業務は会計基準や税法などに沿った形で行われることになります。そのため、最新の法改正については常に確認しておかなければなりません。
法改正がされればこれまでとは対応も変わってきます。法改正のたびに学ばなければならないこと、変更しなければならないことが多いのも経理業務にとっての大きな課題といえるでしょう。
万が一、法改正への対応が遅れてしまった場合は、罰則を科されるリスクもあります。特に2002年には電子帳簿保存法が改正され、経理の業務は複雑化しました。
電子取引についての理解を深め、しっかりと対応していかなければなりません。
ただ、通常業務が忙しいと法改正への対応が難しくなってしまうのも大きな課題のひとつです。
経理業務は、その人でなければ対応できない属人化が起こりやすい業務といえます。専門的な知識が求められること、少ない人員で業務を行っていることなどが大きな理由です。
属人化している職場では、その担当者が休んだ場合などに業務が進みません。
特に担当者が突然退職してしまった場合は担当者が行っていた業務をどのように進めれば良いかまったくわからず、大きなトラブルにつながる恐れもあります。
また、一人ひとりが効率の良いやり方を探し、担当者独自のやり方で業務を進めてしまうことも少なくありません。このような状況では、仮に経理担当が不正を行っていたとしてもなかなか周りは気づけません。
業務の見える化や標準化などを進める必要があるほか、情報共有ができる仕組みを作っていくことも重要です。
現在行われている経理業務には問題があると感じているのであれば、業務改善に取り組んでいきましょう。
業務改善によって以下のような恩恵が期待できます。
経理業務の改善を行うことにより作業効率が良くなり、その分人件費を抑えることが可能です。
特に忙しい時期は長時間の残業が連日発生してしまうこともあります。業務改善によって残業をなくすことができれば、大幅なコストの削減につながるでしょう。
また、効率の良い作業ができるようになれば従業員にも心の余裕が生まれ、忙しさからくるミスなどが起こりにくくなります。
ミスが発生すればその修正作業をしなければならないので、そのための時間が必要です。
業務改善を行った結果ミスが減ることにより、修正作業に必要だったはずの時間やコストを削減することにつながります。
また、ペーパーレス化を行った場合は、紙の印刷や管理にかかるコストを削減することも可能です。
経理の業務を改善するためには、属人化を排除する必要があります。属人化が排除され他の従業員も担当できる業務が増えれば、一人の担当者に業務が集中してしまうこともありません。
結果として、担当者が休んだときでも他の従業員がカバーできるようになります。
また、属人化が起こっている場合はその人が退職した際に本人が持っていたノウハウやスキルが失われてしまいますが、そういった心配もなくなるでしょう。
業務のブラックボックス化を防ぎたいと考えている場合も業務改善を行い、属人化の排除ができるように取り組んでいくことが重要です。
経理が担当する業務の中には、煩雑で時間のかかる作業があります。
例えば、請求書の作成や給与の計算などです。これらの業務改善ができるようになると、業務の負担が減る分、コア業務に注力できるようになります。
コア業務は利益に直結する業務です。例えば、資金計画や予算管理などがあります。
コア業務にリソースを集中させられるようになれば、それだけ企業の売り上げ向上が期待できるでしょう。
経理が担当するコア業務の中には、力を入れて取り組むことにより企業の競争力を高めることにつながるものもあります。企業としての生産性を向上させるためにも重要なポイントなので、ノンコア業務の効率を上げ、コア業務に集中できる環境を整えることは大切です。
日々忙しく働いている従業員の多くは、疲れやストレスを感じています。特にコア業務ではないノンコア業務に時間を取られてしまっている場合、仕事の中でやりがいを感じることも難しくなってしまうでしょう。
一方で、業務改善によって残業が減ったりコア業務に集中できたりするようになれば、従業員の満足度向上が期待できます。
特に、繁忙期に残業や休日出勤が続いてしまう職場では、限界を感じて退職を検討する従業員も出てくるでしょう。
経理の業務は専門性が高いため、従業員が離職してしまった場合は、新たな人材を探さなければなりません。
業務改善によって従業員にとって働きやすい環境を提供して満足度を向上させることは、離職率を低下させ、企業にとっての新規採用コストを抑えることにもつながります。
実際経理部門で業務改善を行うにはどのような方法を実践していけば良いのでしょうか。ここではおすすめの方法を5つ解説します。
同時に行うのは難しいため、ひとつずつ取り組んでいきましょう。
関連記事
「業務改善とは?実施方法や役に立つおすすめのフレームワーク」
帳票とは、帳簿と伝票の総称です。帳簿には、事業取引に関することや会社のお金の流れが記録されています。
また、伝票には日々の取引やお金の動きが記載されており、どちらも重要なものです。
日々の業務の中で頻繁に取り扱うことになるので、これらのフォーマットがバラバラである場合、対応に時間がかかってしまいます。フォーマットが異なる場合、全体で統一することで業務改善につなげられるようになるでしょう。
自社にとって使いやすいフォーマットにすることも重要です。
業務改善を行うためには、業務を可視化することが欠かせません。経理部門が行っているすべての業務を洗い出し、工数や業務内容、手順、必要な人数やスキルを可視化していきましょう。
業務を可視化していく際には、体系表を使用すると効果的です。
業務体系表を使って業務を整理、可視化していくことにより、どの工程が無駄なのか見つけやすくなります。
業務の中には、昔から行っているものの、実は不要なものが含まれているケースも少なくありません。ですが、それを行うのが当たり前の状況では、不要な業務だと気づけないこともあります。
さらにマニュアルを作成してその業務を行う意味などを考えていけば、各業務の必要性を再確認できるでしょう。
企業として進めていきたいのが、キャッシュレス化です。キャッシュレス化により、現金を取り扱う小口精算などの業務負担が少なくなります。
小口現金が発生する場合は、現金の補充や両替などのほか、現金出納帳の管理なども行わなければなりません。
もし、金庫の残高と金額が合わない場合はそれを見つけ出さなければならず、そのための時間や人件費も必要です。キャッシュレス化ができればこれらの業務が不要になります。
IT化・DX化できるところは積極的に行うことをおすすめします。IT化とは、ITツールを導入することにより経理業務をシステム化するなどして効率的に行うことです。
会計ソフトや経費精算システムのほか、基幹業務の総合的な管理ができるERPシステム、AIなどを活用した方法があります。
また、DX化とはデジタル技術を用いて従来の業務方法を変革していくことです。キャッシュレス化のほか、ペーパーレス化もDX化のひとつです。
業務改善につながりそうなシステムや仕組みは積極的に取り入れていきましょう。
経理部門はノンコア業務が多く、ノンコア業務の中には業務委託が可能なものが多く含まれています。
これらを外部に委託することによって従業員の負担を抑えたり、コア業務に注力できたりするようになるでしょう。給与計算や年末調整など時間のかかる作業も委託可能です。
業務委託サービスを利用する以上費用はかかりますが、時間のかかる業務を委託することで従業員の残業や休日出勤が減り、総合的なコストを抑えられることもあります。
具体的に経理業務の改善はどのように進めていけば良いのでしょうか。以下の3つのステップで行いましょう。
関連記事
「業務改善の進め方は5ステップ!活用したいフレームワークも確認」
先に行いたいのが、現在行っている業務内容の洗い出しと可視化です。これらをしっかりと行っておかないと、どこを改善すべきか見えてきません。
十分に時間をかけて行いたいポイントです。
洗い出すのは、すべての業務です。誰が、いつ、どういった作業をしているのか細かく洗い出しましょう。
ECRSの原則に沿って課題を発見していきましょう。
ECRSとは、以下の意味を持つフレームワークのことです。
【ECRS】
そもそも必要ない工程や作業なのであれば、排除してしまいましょう。
中身のない会議や、特に必要性のない報告書の作成などが挙げられます。各作業が本当に必要なのか、工夫することで簡単にできないかなども話し合ってみてください。
業務改善には終わりがありません。そのため、具体的な目標を設定してから始めることが大切です。
目標は達成可能なものを設定しましょう。また、具体的に数値などを用いて明確な目標を設定することも欠かせません。
いつまでに、どの程度の目標を達成するのかなども改善策を実行する前に定めておきましょう。
業務改善のやり方が明確になったら、実際に取り組んでいきます。あとは定めていた期限になったら目標がきちんと達成できているか確認し、必要に応じて改善策を変更しながらPDCAサイクルを回していくのが一般的な流れです。
経理の業務改善を行う際には、チーム全体で取り組んでいくことが重要です。経理の業務改善といっても、経理部門だけで大きな効果が期待できるような業務改善を行うことは簡単ではありません。
他の部署とやり取りをすることが多い経理部門だからこそ、組織全体で業務改善に取り組んでいく必要があります。
まずは現在の経理部門にどのような問題があるのかを洗い出した上で、他の部署などに連携や協力を求めましょう。
また、業務改善の方法について紹介しましたが、各社で適している方法や課題が異なります。そのため、自社に合った方法を取り入れていくことが重要です。
自社に合わない方法を実践してしまうとかえって業務効率が悪くなってしまうこともあるので、注意しましょう。
いかがだったでしょうか。経理業務において抱えやすい課題や業務改善の方法、どのようなステップで行っていけば良いかなどを紹介しました。
業務改善によって期待できる効果や、具体的な方法などをご理解いただけたかと思います。企業の利益向上につながるケースも多いので、しっかり取り組んでいきましょう。
経理業務の改善には、業務マニュアルも含めた業務の見える化と標準化が効果的です。マニュアル作成は専門的な知識を必要とするため、ぜひフィンテックスにおまかせください。
企業によって異なる実業務を十分に理解した上で最適なマニュアル作成を行っています。
監修者
企画営業部 営業本部長 / 経営学修士(MBA)
<略歴>
フィンテックスにて、マニュアル作成に関する様々な顧客課題解決に従事。 金融系からエンターテインメント系まで様々な経験から幅広い業務知識を得て、「分かりやすいマニュアル」のあるべき姿を提示。500社以上のマニュアル作成に携わる。また、複数の大企業でマニュアル作成プロジェクトの外部マネージャーを兼務している。 趣味は茶道。